第3話 師匠、登場Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」(1/4 ページ)

» 2008年09月10日 12時00分 公開
[眞木和俊,Business Media 誠]

この物語は……?

 中村誠、32歳。静岡県出身、東京の中堅私立大学を卒業し、彼女いない歴3年。加工食品メーカー「アイティフーズ」に入社してちょうど10年目を迎える中堅社員です。誠が社会人として働いてきた10年間は、日本経済が停滞し“失われた10年”といわれた時代。年功序列制度が成果主義に代わり、後輩が入らず今までずっと下っ端として働いてきた誠も、そろそろ「中堅社員」と呼ばれる年代になってきました。

 これまでマネジャーとすら呼ばれたことがない誠は、ある日突然、社内プロジェクトのリーダーに登用されます。ビジネスリーダーの心構えとは? 部門横断型のプロジェクトを成功させるコツとは? 本連載では小説形式で、誠が奮闘しながら成長していく姿を描いていきます。

前回のあらすじ

 加工食品メーカー・アイティフーズに入社10年目の中村誠は、新商品開発プロジェクトのリーダーに抜てきされた。しかしさまざまな部門から集められたメンバーの中には、誠に対して協力的でない者もおり、一筋縄では行かなさそうだ。「会社がこのプロジェクトにいかに期待しているかをメンバーに理解してもらいたい」――そう考えた誠は、社長の小石川から直接、メンバーに話してもらうことにした。キックオフミーティング当日、小石川社長ともう1人、見慣れぬ人物が会議室に入ってきた。(登場人物紹介は記事の最終ページにあります)

「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」のバックナンバー

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  14. Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」:第1話 入社10年、突然のリーダー指名
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 キックオフミーティング当日。メンバーが全員そろったところで、再び会議室のドアが開いた。入ってきたのは、アイティフーズの3代目社長・小石川登だ。

 社長の登場に、会議室の空気が張りつめたようになったが、すぐに皆の視線は、その隣にいるこざっぱりとした感じのダークスーツに身を包んだ人物に集まった。

 (ラッキー! 本当に社長も出席してくれたんだ。……でも、隣のあの人はいったい誰なんだろう?)

小石川 途中参加になってすまなかったね。私たちに構わず続けてください。

 部長の東山貞治に勧められた席に座りながら、小石川は正面に立っていた中村誠に向かって声をかけた。

 あ、はい。ええと、初めにプロジェクトオーナー※の東山部長から今回の「新商品開発プロジェクト」、通称“イソプロ”について説明をしていただきます。東山部長、よろしくお願いします。

※プロジェクトオーナー…プロジェクトのテーマを設定し、結果責任を負う立場。部課長級がこれに当たるのが一般的。

東山 こんにちは、製造部の東山です。皆さん忙しい中、キックオフに参加してくれてありがとう。このプロジェクトは、そこにお座りの小石川社長が推進する全社業務活性化活動「I2プロジェクト」の一環で始められたものです。今回、皆さんを含めて4つのプロジェクトチームが発足し、いろいろなテーマが並行に活動を進めることになっています。その中でこの“イソプロ”チームは、次の世代を任せる人材を育てる目的も兼ねて、リーダーの中村君を始め、若手ばかり6名で構成しました。皆さんには当社の誇る高品質“大豆イソフラボン”を利用した新型飲料を世に出して、アイティフーズが次の一歩を踏み出すチャンスを1日も早く作ってもらえるよう期待しています。とはいえ、こうした取り組み方は当社としても初めての試みなので、私もしっかりとサポートしたいと思います。では、これから約半年間で一緒に成果を出していきましょう。

 ありがとうございました。次にメンバーの自己紹介をお願いします。一応部署と名前を言ってから、一言抱負を述べていただけると嬉しいです。では、仲居さんからでよろしいですか?

 誠は一番近くに座っていた仲居を指名した。

仲居 水戸工場の仲居です。自分は、お客様が安心できる製品を作ることがすべてだと信じてやってきた人間です。この新商品も確かなものでなかったら作る気はまったくありませんので、そのつもりで気合入れてやりたいです。そこのとこ、よろしく。

 どうやら最後の一言は、誠に直接向けられたようだったので、ちょっとビクついてしまったが、気を取り直して次に進めた。

 次は、山口さんお願いします。

山口 商品販売部の山口勉といいます。このチームでは最年少だと思うので、皆さんお手柔らかにお願いします。このプロジェクトに入れて、他部署の人と一緒なので楽しそうですし、社長にも顔を覚えてもらえそうで嬉しいです。ちなみに数値分析なら得意なので、任せてもらえればすぐにやっておきます。

 それは頼もしいなあ。実は僕、数字はあまり得意じゃないんで、全部山口さんに任せますね。では、小栗さん、次いいですか?

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