第8話 リーダーには“○○深さ”が大切Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」(1/3 ページ)

» 2008年10月15日 19時00分 公開
[眞木和俊,Business Media 誠]

この物語は……?

 中村誠、32歳。静岡県出身、東京の中堅私立大学を卒業し、彼女いない歴3年。加工食品メーカー「アイティフーズ」に入社してちょうど10年目を迎える中堅社員です。誠が社会人として働いてきた10年間は、日本経済が停滞し“失われた10年”といわれた時代。年功序列制度が成果主義に代わり、後輩が入らず今までずっと下っ端として働いてきた誠も、そろそろ「中堅社員」と呼ばれる年代になってきました。

 これまでマネジャーとすら呼ばれたことがない誠は、ある日突然、社内プロジェクトのリーダーに登用されます。ビジネスリーダーの心構えとは? 部門横断型のプロジェクトを成功させるコツとは? 本連載では小説形式で、誠が奮闘しながら成長していく姿を描いていきます。

前回までのあらすじ

 新製品開発プロジェクトのリーダーに抜擢された中村誠。苦労しながら商品開発を進める中で、部門横断型のプロジェクトチームを運営する難しさや、時間を効率よく使うことの大切さなどに気付いていく。(登場人物一覧は記事の最後にあります)


 広報部の浜崎しほから、社内報の取材のオファーを受けた翌日。昼休み、誠のところに、広報部から取材班が訪ねてきた。もっとも取材班といっても2名だけで、浜崎本人ともう1人は顔も名前も知らない若い女性だ。

 あれ? こんな人、ウチの広報部にいたっけ。今まで会ったことないなあ。

浜崎 お言葉に甘えて取材にきましたよ、中村リーダー。こちらは後藤美咲さん。入社3年目のホープで、浜松工場から本社広報部に異動してきて、先月から社内報『ほのぼの』の編集担当者になったんですよ。

美咲 はじめまして、後藤美咲といいます。中村さん、急なインタビューにご協力くださり、ありがとうございます。今日はよろしくお願いします。

 あー、ええと、はい、こちらこそよろしく。

 美咲にニコッとほほ笑みかけられ、誠はまたしても緊張モードになりかけた。しかしそこはこの数カ月間のリーダー修行(?)のおかげで、やや舞い上がりかけた自分をなんとか抑えることができた。

 これもプロジェクトリーダーの仕事ですからね。喜んでインタビューにお答えしたいと思います。

浜崎 昨日メールでお願いしたように、取材のテーマは“賢い時間の使い方”についてです。この間のチーム討議でのリーダーのお話が印象深かったので、私から提案してみました。社内でプロジェクトのことを知ってもらう機会でもあるので、いいお話を期待していますよ。

美咲 プロジェクトの活動内容については事前に浜崎さんから説明していただいたので、だいたい理解していると思います。その上でお聞きしますけど、中村さんはどうしてこのプロジェクトのリーダーに選ばれたのですか?

 え? そういわれてみれば、僕自身も選ばれた理由は聞いてないんです。たまたま東山部長から指名されたってだけで。もしかすると社内には特別な選考基準とかがあるのかもしれないけど。

浜崎 これはあくまでも噂ですけど、私が聞いた話では“師匠”が提示した要件を満たす候補者を、社内で探したってことみたいですよ。

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