ベトナム中部の、もう1つの世界遺産の街──フエ。ここはかつて、ベトナム最後の王朝、グエン王朝の都が置かれていた。フランスの植民地だった時代も含めて、計13人もの皇帝がここフエで暮らしていたことになる。現在はハノイ、ホーチミンに次ぐベトナム第3の都市だ。列車の駅のある側が新市街で、フォン川を挟んで向こう、王宮のある側が旧市街。まずはその王宮を訪ねてみよう。
ここはホイアンと比べると、バイクの数がやたらと多い。道端にシクロを止めた運転手たちからは「ほら、乗っていきなよ」とひっきりなしに声がかかる。
王宮に到着した。広大だ。高さ5メートルの壁が城の周囲を10キロにわたって取り囲んでいる。王宮はベトナム戦争で一度は破壊されてしまったものの、現在は修復されてかつての姿を取り戻した。入り口(王宮門)を抜けると、その先にある赤い屋根の平屋の建物が、皇帝が謁見(えっけん)を行ったという「太和殿」。どこかで見たことがあると思ったら、北京の紫禁城(しきんじょう)と同じ造りなのだそうだ。グエン王朝は中国文化を積極的に取り入れた。中国では皇帝の象徴とされる龍の装飾も、王宮内のあちこちで見ることができる。
王宮だけではない。フエの街には寺院、皇帝廟など歴史ある建築物が点在している。成田からホーチミンへ向かう機内で男性キャビンクルーが「ベトナムの文化を味わう旅ならフエがいい」とすすめてくれたのを思い出した。1601年に建てられた7層8角形の塔が美しいティエンムー寺、ほかの廟と比べても最も威厳がある造りのミンマン帝廟など、すべてを訪ねようと思うととても1日や2日では回り切れない。街全体に流れるゆったりした時間と同様、旅の日程もゆとりをもってプランニングするのがいい。
ティエンムー寺へは、私はフォン川の反対岸からドラゴンボートで訪ねてみた。所要時間は約1時間。出航してしばらくすると、アテンダント役の女性たちが刺繍の絵や袋物を船内に広げて販売を始める。その熱心さにちょっと閉口したが、これはこれで、ベトナムらしい光景と言えるかもしれない。
フエの歴史建造物の中でも最高に美しいといわれるミンマン帝廟も、ぜひ訪ねてみたい。ミンマン帝はグエン朝の2代目皇帝で、廟は1841年から3年かけて造られた。蓮池を渡ると、その先の広大な敷地に風格のある門や建物、石像などが次々と出現。手の込んだ装飾や中国様式の建築が訪れる人たちの目を楽しませてくれる。
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