地方都市で新しい企業が生まれるにはどうしたら?――福岡市の試みサイボウズ 青野慶久氏×福岡市 合野弘一氏(4/6 ページ)

» 2014年10月15日 06時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

多様性をもった働き方

合野: 福岡市にはたくさんの留学生がいるのですが、彼ら、彼女らの中で「日本で働きたい」と思っている人は半分ほどいるんですよ。でも、実際に就職できるのは10%以下という現実があります。

青野: ミスマッチが起きていますね。

合野: 将来のアジア展開をにらんで、いまのうちから留学生をどう活用すればいいのか、ということを真剣に考えていかなければいけません。最近、地元のゲームメーカーがアジア展開を考えて、留学生を積極的に受け入れているので、このような企業がたくさん出てきてほしいですね。

 あと、福岡市には女性が多い。15〜29歳の女性の割合が日本一なんですよ。そのため、若い女性に関連する事業は活性化しているんですよね。例えば、美容や食関係。ただ、現状に満足していません。成長していくためには、女性ならではの切り口、アイデア、サービスが必要。女性の場合、どうしても結婚、出産などの問題があるので、彼女たちが働きやすい環境をつくっていかなければいけない。多様性をもった働き方は、重要な課題ですね。

青野: 女性の活躍推進を進めている企業は、それに限らず、次の時代でやっていくためのノウハウを蓄積できると思うんですよ。福岡市でも女性が活躍できる街づくりができれば、次の時代に有利なポジションを築けるのではないでしょうか。

 都会は出生率が低い。厚生労働省によると、47都道府県で最も低いのは東京(参照リンク)また総務省によると、育児をしながら働いている女性の割合も東京は低い(参照リンク)。都会でありながら、女性が働けてしかも子どもが育てられる街というのは魅力がありますね。

 男性にはまだまだ“大黒柱神話”があります。「男性が働いて、女性を食べさせなければいけない」「家族を養うために、フルタイムのワーカーでなければいけない」「賃金が上がっていかなければいけない」――。こうした古くからある価値観にしばられて、男性もなかなか結婚に踏み切ることができないんですよね。

 では、どうすればいいのか。女性が社会進出するために、男性はもっと女性に頼っていいと思うんですよ。「大黒柱でなくてもいい」「家事や育児をやってもいい」「収入の多いパートナーに働いてもらう」――。こうした価値観は男性だけではダメ。女性だけでもダメ。双方が持っていれば、うまく回っていくのではないでしょうか。そうでないと、未婚率の低さ、出生率の低さを改善するのは難しいのかなあと。

合野: 男性の多くは、まだまだ“九州男児”のような考え方が残っているのかもしれません。青野さんがおっしゃたように、これからの時代は価値観を変えることが必要ですね。

青野: 政府は「女性の力を活用しろ」「女性の力を活用しろ」としきりに言っていますが、いまの状態で女性ががんばっても男性の働く場所が減るだけ。なので、価値観を変えていくしかないと思うんですよ。

合野: 結婚して、出産した女性の多くは、仕事を続けるのが難しくなってきます。もし、給料が2割減っても在宅で働くことができれば、仕事を続けたいという人もいるのではないでしょうか。育児がひと段落して、会社に復帰できるシステムがあれば、社会はずいぶん変わると思うんですよね。

青野: だと思います。しかし、そこで法律的な問題に直面するんですよ。いまの制度だと「短時間」というだけで、時給の仕事になってしまう。これって、現実との矛盾が起きていますよね。女性が活躍するためには、現実をよく見て、法律を変えていく必要があるでしょう。

合野: 年功序列型の社会が基本にあって、パートか正社員か、どちらかしか選べないところに問題がありますね。多様な働き方ができるように環境を整備すれば、日本全体がもっともっと活性化するでしょう。

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