地方都市で新しい企業が生まれるにはどうしたら?――福岡市の試みサイボウズ 青野慶久氏×福岡市 合野弘一氏(5/6 ページ)

» 2014年10月15日 06時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

地方に必要な会社に注目

青野: サイボウズは松山市でスタートしましたが、愛媛県の人から「サイボウズのような会社を地元から誕生させるのにはどうのようにすればいいですか?」といった質問を受けることがあるんですよ。これに対し、私は「そういったことは考えないほうがいいですよ」とお答えしています。なぜかというと、冒頭でも申し上げましたが、サイボウズはたまたま松山市に拠点を置いただけで、松山市民を相手に商売をしようと思っていたわけではありません。なので、地元の人にとって、サイボウズのような会社はあまり魅力がないと思うんですよ。

 逆にいうと、地方に必要な会社に注目しなければいけません。経営共創基盤の冨山和彦CEOは著書『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)の中で、「GとLの経済」について書かれています。GというのはグローバルのG、LというのはローカルのL。企業は二分化されていて、多くの企業はGばかり注目している。そうした企業は世界に羽ばたいて、日本からいなくなってしまう。税金を払わなくなってしまう。工場をつくってもロボット化を進めてしまう。そうした会社は規模は大きいかもしれませんが、日本にあまり貢献していないんですよね。

 一方、Lの企業は地元のために動いてくれるので、経済の原動力になってくれる。しかも地域にとっていいサービスを提供してくれることが多いので、地元の人の幸福につながるかもしれません。

 この視点はものすごく大切だなあと感じているんですよ。会社を立ち上げると、経営者は「グローバルに展開できる会社にしなければいけない」と思いがち。規模は大きくないかもしれませんが、地元に貢献する企業がたくさんあるほうが地方にとってはメリットが大きいのではないでしょうか。例えば、散髪屋がないところに散髪屋が出店すれば、地元の人は喜びますよね。サイボウズなんかがやって来ても、誰も喜びませんよ(苦笑)。

合野: なるほど。ただ、新しいサービスや仕組みをつくっていれば、他のところでも使えるのではないでしょうか。例えば、ゴミの分別。いまでは行政も企業も当たり前のように行っていますが、福岡市でそれを導入したのは早かったんですよ。その仕組みがいまアジアに広がりつつある。

青野: 今、日本の「交番」や「給食」の仕組みを輸出しようという動きがありますよね。2つとも商品ではないですが、発展途上国にとってはすぐに取り入れたい仕組みなのかもしれません。先ほどのゴミ分別のように、福岡市がつくった仕組みはやがて“武器”になるかもしれません。

「交番」の仕組みを輸出しようという動きがある(写真はイメージです)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.