地方都市で新しい企業が生まれるにはどうしたら?――福岡市の試みサイボウズ 青野慶久氏×福岡市 合野弘一氏(3/6 ページ)

» 2014年10月15日 06時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

福岡市は“出会う場”を提供

福岡市経済観光文化局の合野弘一理事

合野: ある外資系で働く人はこのように言っていました。「日本には地方の企業が輝けるような仕組みが必要ではないか」と。東京では、ひとつひとつの企業は見えにくくなります。地方にしかない特色が見えてくれば、日本も層が厚くなるのではないでしょうか。東京とスケールメリットで勝負しても勝てないので、それ以外の部分で勝負できるようになればいいのになあと思いますね。

青野: バンダイの工場は静岡にあるんですよ。プラモデルなど流行を追い続けなければいけないのに、なぜ静岡にあるのか。関係者に聞いたところ「静岡には伝統的な職人さんが多くて、プラモデルのような金型を作るのには、条件がものすごくいい」と。マツダの関係者も同じようなことを言っていました。「広島は部品工場がたくさんあって、道の作り方ひとつとっても、クルマが作りやすいようになっている」と。両社ともそうした理由があるので、いまの街を出ていく必要がないんですよね。

 街がきちんとしたコンセプトを持つことが大切でしょうね。どの産業を誰に対して支援していくのか、といったことを決める。思いつきで「ベンチャー企業のみなさん、集まってくださいね」と言っても、なかなか集まらないですよ。

合野: 地方都市の役割は何か、ということですよね。福岡市の場合でいえば、人口当たりの学生数は政令指令都市の中で2位。人材を供給する環境は整っているので、若い人たちがいろいろな人たちに“出会う場”を提供していかなければいけません。また、ベンチャー企業には安い賃料でオフィスを提供しているので、まずは来てもらう。そして、いろんな人たちに“出会う場”を提供しなければいけません。

青野: 具体的にどんなことを考えていらっしゃるのでしょうか?

合野: いろいろなことをやっているのですが、その中のひとつに「スタートアップカフェ」があります(参照リンク、PDF)。このカフェは10月にオープンしたのですが、いろんな人が集まれるような場所なんですよね。今後ここからいろんなアイデアが生まれて、会社が誕生すればいいなあと思っています。

青野: どういう業界を期待していますか?

合野: 知識創造産業(ソフトウェア、半導体、コンテンツなど)、健康・医療、環境・エネルギーなどを支援していきたいですね。

青野: シリコンバレーを見ていると、巨大企業で働いているのにそこを辞めて、会社を立ち上げる。そして、その会社が巨大企業に買収されて、その人は再び同じ会社で働くことになる。そうした人が増えてきているんですよね。ベンチャー企業ができたからOK、というのはよくない。将来どうしたいのか、という“出口”が決まっていないと、数年後どうなるか分かりませんので。

 なので、大企業と中小企業とベンチャー企業がいろいろなところで交流するのは、とてもいいことですよね。

スタートアップカフェの完成予想図

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