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» 2009年05月05日 07時00分 UPDATE

“ネットと政治”を考える(後編)――ネットユーザーが選挙でやれることとは? (1/9)

アジャイルメディア・ネットワークは4月24日、「インターネットが選挙を変える? 〜 Internet CHANGEs election 〜」を開催した。ネットが政治にどう参加できるのかについてさまざまな分野の専門家が知見を語った。後編では自民党や民主党の国会議員も参加した第2部の「パネルディスカッション」の様子を詳細にお伝えする。

[堀内彰宏,Business Media 誠]

 アジャイルメディア・ネットワークは4月24日、東京・千代田区のデジタルハリウッド東京本校で「インターネットが選挙を変える? 〜 Internet CHANGEs election 〜」を開催した。日本では少なくとも9月までに衆議院議員選挙が行われるが、イベントではネットが政治にどう参加できるのかについてさまざまな分野の専門家が知見を語った。

 イベントは2部構成。第2部では第1部で講演したフライシュマンヒラード・ジャパンの田中慎一CEOや構想日本の伊藤伸氏に加え、自民党の河野太郎衆議院議員、民主党の鈴木寛参議院議員、NPO法人ドットジェイピーの佐藤大吾理事長、フォーナイン・ストラテジーズの西村豊代表、国際大学GLOCOMの楠正憲客員研究員、アジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦社長が参加したパネルディスカッションが行われた。後編では第2部の模様を詳しくお伝えする。

 →“ネットと政治”を考える(前編)――オバマにできたことが、なぜ日本の公職選挙法ではできないのか?

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ネットと政治の関係

 最初に田中さんにオバマ戦略も踏まえて、日本の選挙がこれからどう変わっていくのかをお話いただければと思います。

ah_n2.jpg フライシュマンヒラード・ジャパンの田中慎一CEO

田中 先ほど、あえて誤解を恐れずに「民意を作る」と言いました。私は日本の国政選挙のお手伝いもしたことがありますが、欧米の選挙を見るとマーケティング的な志向があることに気付きました。

 欧米の場合は「国民に対してサービスを提供していくんだ」という発想があって、「国民がどういう潜在的ニーズを今持っているのか」を把握するためにかなりのお金をかけて調査をします。その調査結果をベースに選挙での争点設定をする。今回のオバマの場合は土俵まで設定しました。争点設定のもっと上をいく共通認識、今の時代はこうなんだという時代認識を顕在化させたわけです。マーケティングでは当たり前のことなのですが、お客さまが持っている潜在的なニーズを先取りして、先取りしたものを言葉にしてお客さまである国民に発信する。米国の選挙はそういう発想が非常に強いと僕は思います。

 日本も各政党間で調査をやります。しかし、どちらかというと「どこに投票するんだ」「どこを支持するんだ」ということが調査の中心で、「国民が今困っているニーズは何なのか」「国民がまだ気が付いていないニーズは何なのか」という有権者視点の調査ではありません。

 先ほど伊藤さんが「公職選挙法は候補者中心の思想で作られている」と話されました。それはその通りで、日本の政治ではもう少し有権者の視点に立った法改正がこれから必要であると同時に、政党や政治家の側もより国民のニーズを先取りして提案をしていく、「こういう時代認識なんだ」「今こういう争点設定が重要なんだ」と提案することがこれから必要なのではないかと思います。

 今の日本の1つの問題点は、政策を語るという雰囲気にないことです。マスコミはみんな政局ばかりを追いかけている。政党や政治の世界も、どちらかというと政局中心に回っているような気がします。そうではなくて国民のニーズに対して「どういう商品(政策)を提供するのか」という仕組みができると、オバマ的なところまでいくかは分かりませんが、もう少し選挙が国民レベルの目線から見ても面白くなるのではないでしょうか。

 伊藤さんには第1部で公職選挙法の解説をしていただきましたが、特にネット選挙を考えた場合に「何から変えていくのが現実的なのか」ということでご意見いただけますか。

ah_n3.jpg 構想日本の伊藤伸氏

伊藤 公職選挙法は全体を変えて、その1つとしてネットを自由化するということは当たり前の話だと思っています。しかし、1点だけ気を付けなければならないのは、例えば「選挙期間中にホームページを更新していいですよ、メールを自由に使っていいですよ」となるだけで、果たして有権者に格段に異なった情報が届けられるかというと「そこまではいかない」と思っています。

 なぜかというと、1つは日本では選挙期間が決まっていることにあります。選挙期間を決めている国は日本とフランスくらいです。米国(大統領選挙)では予備選挙から含めると1年間くらい、選挙イヤーとしてメディアを含めて盛り上げていくわけです。日本は選挙期間の12日間(衆議院議員選挙)とか17日間(参議院議員選挙)限定で選挙をやっています。秘書をしていた私のような政治の側では、選挙がスタートする告示日には「選挙が終わっている」とさえ言われるように、事前の選挙運動ではない選挙運動、「グレーなところをどうやってやっていくか」ということに力を置いているわけです。

 そうなるとメディアにはあまり注目をされない中、「どうやって地味にビラを配るのか」「電話をかけていくのか」というようなことをやって選挙に出る。結果として、皆さんには本当に欲しい情報が伝わらず、「どういう候補者がいるか、ほとんど分からないまま投票しなければならない」という状況が続いているのではないかと思います。

 ですから、決してすぐにできる話ではないのですが、ネットの自由化と同時に選挙期間の撤廃も提案していきたいと思います。ただ1点、私はネットのことはほとんど素人です。成りすましメールや偽ホームページなど、ネット選挙のよくある問題点を先ほど話しましたが、私にはその解決法がよく分かっていません。多分皆さん、詳しい方が多いと思いますので、メールやブログで教えていただきたい。「そういうところから有権者が変える公職選挙法ができていくのではないか」と思います。

 河野太郎さんは「ごまめの歯ぎしり」というブログを熱心に更新されるなど、実際に政治家としてネットを活用されていらっしゃる立場ですが、その反響や選挙への影響、また政治運動の中で仕掛けとしてどう感じてらっしゃるかといったことをお話いただけますか。

ah_n4.jpg 衆議院議員の河野太郎氏

河野 政治家にとってネットというのは本当に便利なツールで、私は1996年初当選ですが、最初のうちは国会報告紙を一生懸命印刷して配っていて、今でも配っているのですが、印刷費や配達コストがバカになりません。ところがメールマガジンだと、ほとんどタダで情報発信ができます。ブログもそうですが、そういう面からすると「非常にありがたい」と思っています。

 「選挙でネットが使えない」という話になっていますが、候補者の側からすると全然そんなことはありません。候補者は選挙期間中、朝から晩まで走り回っているので、自分でブログを更新するという時間はもともと取れないと思います。選挙期間中に「メールを出してはいけない」「ブログを更新してはいけない」と言われても、それはあまり大したことではないのです。選挙期間前に必要な情報を(Webサイトに)あげておけば、選挙期間中にホームページを見に来てくださった方には情報が伝わります。必要な情報はそれまでにあげているわけですし、日々の活動を伝えていれば、それは全部残っているわけです。「ホームページを閉鎖しろ」ということにはなっていないので、候補者側からすると「今そんなに不便なの?」というのが正直な感想です。

 ただ、3つ問題があると思っています。1つ目は公職選挙法です。これがどれだけひどいかというと、僕の選挙区には有権者が約50万人、18万世帯くらいが住んでいますが、1世帯に1枚ビラを届けられるほどビラの枚数が許可されていません。「じゃあ、回覧してください」と言うと、明確に「回覧してはいけない」となっているので公選法違反になります。そして、「ビラは演説会場、または選挙事務所に取りに来い」と決められていますが、演説会場や選挙事務所に来てくださる方は多分河野太郎にもう入れる方です。それ以外は配れません。新聞折込はやってもいいことになっていますが、子育て支援策の話をしようと子育て世代を選んでビラを配ったら公職選挙法違反になります。また、よく「(候補者名の)連呼がうるさい」と言われますが、「動いている車から名前以外のことを言ってはいかん」というのが公職選挙法ですから、連呼しなかったら選挙違反(になります)。

 こうした中でネットだけを解禁すると、恐らく情報発信がいびつになると思っています。だからネットを使えるようにするならば、紙のビラの枚数制限やスピーカーを1セットしか使ってはいけませんという制限も全部やめて、根本的に公職選挙法を変えて、「基本的にお金(選挙資金)の上限だけ決めよう」というルールにした時に初めて、ネット選挙を解禁しないと情報の発信がいびつになると思っています。

 2つ目は誹謗中傷の問題です。2008年11月に最高裁の判決に基づいて国籍法の改正というのを(私とは)全然関係なく法務省がやったのですが、「河野太郎が提案者だ」「あの野郎ぶち殺せ」みたいな(ことが書かれて)、現に白い粉が送られてきたりしました。「総理大臣が海外へ行っている間に、河野太郎が審議を勝手にやってクーデターだ」みたいな(ことも書かれました)。「普通はこんなの信用しないよね」と思っていたら、それを真に受けて「何でお前はそういう悪いことをするんだ」と言いにきた人がいて、リテラシーの低さにちょっと驚いたのと同時に、その程度でそれくらいの話題になってしまうなら、「誹謗中傷を選挙の時にどう抑えるか」ということは結構大きな話だと思いました。国政選挙は有権者が50万人いるのでそれは薄まる(嘘が嘘と見抜かれやすくなる)のかもしれませんが、例えば市会議員選挙で見てきたような嘘を言われたら「ちょっと取り返しが付かないだろうな」と思います。

 (3つ目は選挙資金の問題で)オバマさんとよく比較されますが、あれは数百億円かけている選挙戦です。我々のように1000万円、2000万円が上限の選挙戦とでは、使えるお金が全然違うのでそういうイメージには多分ならないと思います。自分で(Webサイトを)更新する時にはタダですが、「選挙期間中(Webサイトの更新を)やっていいよ。でも、本人は疲れて死んでいるから誰か専任の人(がやる)。しかもオバマみたいなかっこいいシステム入れて」と言うと、「お金の面で相当大変かな」という気がします。

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