“ネットと政治”を考える(後編)――ネットユーザーが選挙でやれることとは?(9/9 ページ)

» 2009年05月05日 07時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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日本のネット社会の可能性

 最後に言い残されたこと、これだけは伝えておきたいということがありましたらお願いします。また、今日のイベントの観客の方々は半分以上がブログをお持ちですので、ブロガーの方々向けに何かメッセージがありましたらいただければと思います。

田中 「オバマのことを見てうらやましがる必要はない」と僕は思います。米国のブログ、というかネットはどのくらいのレベルなのか? 行かれた方は分かると思うのですが、米国は教育水準が低く、文字が分からない人もいます。だから今回オバマ現象が起こった背景には、音楽などいろんな形で人を巻き込んだということがあります。日本のネットは文章を書くというマインドが強いという意味では、レベルが高いのではないかと思うのです。

 ただ、(ネット選挙解禁には)米国にはない法的な問題という部分が大きくのしかかっています。ここの部分を解消すれば、世界に冠たるネット社会が日本で生まれるし、さっき言ったように政治のオープンソース化が実現でき、次世代の民主主義というものを作れる可能性があります。

 また、僕がなぜオバマのコミュニケーションがすごいと関心を持ったかというと、実は彼のコミュニケーションは日本人と相性がいいんですよ。彼の考え方というのは、多様性に非常に寛大なんですね。日本では八百万(やおよろず)の神ということで、あらゆるものが神様になってしまいます。日本人はそういう柔軟な発想を、世界でも唯一と言っていいほど持っているんです。そういうことをベースとした次の新しいコミュニケーションを作る力を持っているんですね。ただネット社会を作る上で問題となるのは法的な部分、これは自民党、民主党、あるいは超党派になるかもしれませんが変えていただきたいと願っています。

伊藤 構想日本でも犬がブログが書いているという形を取っている「ポリ吉ブログ」というものがありまして、基本的に私が書いています。書いていて一番思うのが、普段私たちは「政策を作って、どうやって実現するか」と考えているにもかかわらず、書こうとすると裏取りに労力を要して、発信することの大変さや困難さを感じています。皆さんはそういうことを常に習慣付けられている方だと思いますので、ぜひ今日の話を広げていただけたらなと思っています。

 もう1つ、公職選挙法は10年以上前から特に民主党が改正を言ってきていましたし、構想日本も2002年からいろんなところで発信してきているのですが、まったく状況は変わりません。多分これは政治の中からは変わりにくいことです。今日のお二人(の議員)のようなマインドではない方もいます。今の選挙制度の中で当選をしている議員には、従来の公職選挙法を変えたくないという人もいるのが事実だと思うので、今日のような話をぜひ広めていただきたいなと思います。

佐藤 私も「公職選挙法はもう1回作り直した方がいいんじゃないか」と思って長らく推進している立場ですが、今日の議論を見ただけでも「いろいろ問題があるんだなあ」ということは伝わったのではないかとは思います。与党の先生も野党の先生も「変えたほうがいいよね」と一致してるのに、中々そうならないのには「複雑な政治プロセスがあるんだろうな」と想像します。ブロガーの方には今日の感想を書いていただければ、チェックさせていただいて反省として生かしたいと思っていますし、若い学生たちにも伝えていきたいなと思っています。

西村 一昔前は、何か嫌なことがあっても飲み屋で愚痴を言うくらいしかありませんでしたが、今はブログに書けばいいんです。悪口を書くのではなくて、「私はこう思う」ということを皆さんが書いていけばいいと思いますし、もちろん私もやりたいと思います。選挙はもう手段でしかなくて、(政治は)ブログで変えられると思っています。

 私はもともとノンポリなのですが、先ほども言いましたが一番嫌なのは、普段は無関心でいて、後で人のせいにしたり、社会のせいにしたり、政治のせいにしたりすることです。それは損だろうと思いますので、前向きにどんどん言って世の中を変えていきたいと思います。

鈴木 ブロガーの方にメッセージということで申し上げますが、裏取りする上で一番簡単なのは「本人にインタビューメールを送っていただく」ことなんです。「ブロガーの誰それです。こういうブログを書いています」とブログのURLを付けてメールしてもらえれば、「こういうことをされている方なんだ」とすぐに確認できるので、真面目にブログをやっておられる方であればインタビューされたことに対してきちんと我々はお答えします。同じような質問が膨大に集まれば、「多くのブロガーからこういう質問を受けました」といった風にホームページなり何らかの方法を使ってお答えします。

 それから田中さんがおっしゃったように、ネット民主主義を日本でも作ろうじゃないですか。僕は慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の助教授の時に「藤沢市民電子会議室」をやったのですが、これはすごくうまくいったんです。その次にやった「教育改革国民会議」という取り組みもうまくいって、コミュニティスクールの提案までいったんです。ここまではすごくうまくいったのですが、私が議員になった途端に荒らされてしまったのです。

 それで萎えていたのですが、8年ぶりに「もう1回頑張ろう」ということで、さっき申し上げた東京ライブドットジェイピーというのを5月末からやっていきたいと思っています。そういうことを皆さんと一緒にやりたいと思うし、かつそういうWebサイトがいろんなところにあることが大事だと思います。Yahoo!みんなの政治もそうだし、自民党もおやりになったらいい。

 それから公職選挙法はぜひ変えましょう。自民党が完全に2つに分かれるくらい難しい話なので、河野さんにも頑張っていただきたい。公職選挙法は民主主義のインフラなので、僕はまったく政局にするつもりはありません。

 今、民主党がもう法律を出していますが、これを全部押し通そうなんてことは思っていません。もちろん民主党は「(選挙期間中には)Webサイトの更新もメールも全部できる方がいい」という法律を出しています。しかし、これはメディアの前で河野さんにお約束しますが、「1条は○、2条は○、3条は削除、4条は○、5条はここを削れ」とか河野さんが選んでいただければその通りやります。(選挙期間中に)第三者がWebサイトを更新して政策について語ったり、ディスカッションを深めていくというWebサイトの更新のところだけでも自民党をまとめていただければ、我々は譲歩します。

 というのは、やはり(有権者は)選挙の行動を最後の水木金土で決めるんです。ここが止まっているということは致命的なんです。だからそこは皆さまが声を上げていただくことによって、河野さんの背中を押していただいて何とか実現しましょうということです。

河野 (民主党代表の)小沢さんとうちの党の上のほうの人と一緒にやってもらえれば、それが一番世の中早いかなと(思います)。

 先ほど伊藤さんからもお話がありましたが、役所予算の無駄を削ろうという事業仕分けをやっていて、私がチームリーダーで「お前外務省」「お前文科省」「お前何とか省」と手下に割り振って担当させています。しかし、「(お前)警察庁」と言うと、みんな「それはちょっと選挙前は勘弁してください。選挙違反で仕返しされるのが嫌だから」(と答えます)。要するにどこまでが白でどこまでが黒か分からないので、おっかないのです。現にウーロン茶を事務所で出したら買収だと言われて、それを紙コップに注いだらセーフみたいなことがありました。

 それから財務省をいじめると、国税庁が「お前、脱税してるんじゃないか」と来る。昔、大蔵省の予算に因縁をつけた先輩議員が「お前一生脱税できないと思え」と言われたそうです。(私は)するつもりもないから、いいのですが。そういうのがあるので、「公職選挙法はクリアカットにして、これはいい、これはダメということが読んだだけで分かるようにしないと政治的に危ない」と僕はずっと思っています。ネットだけに限らず、そこはきれいにやりたいと思っています。

 それと今日は選挙の話に特化しましたが、選挙は衆議院だと(最長)4年に1回、参議院だと3年に1回です。もちろん選挙でいろんなものが変わるわけですから息入れないといけないのかもしれませんが、それ以外の3年11カ月が非常に大事で、そこは政局というよりは政策なんです。ブログを書いていらっしゃる方にはしつこいようですが、その3年11カ月にどういう情報を出すかということが大事だと(伝えたいです)。

 また、国政選挙の話ばかりになっている気がしますが、特に市町村の市会議員選挙なんかはあまり争点がないままに選挙が終わってしまう。「うちの町は合併するのかしないのか」「子どもの医療費の補助はどこまでやるべきなのか」といったその町のいろんな政策があるはずで、それを取り上げて議論していただくということは意義があると思います。国政選挙だけではなくて地方選挙も大事ですし、選挙だけでなく普段の政策も取り上げていろんなことを発信をしていただいて、それが増えていけばメディアも政局報道だけではなく政策の方へ引きづられてくることになるのではないかと思います。

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