スバルはなぜWRCから撤退するのか――社長会見を(ほぼ)完全収録(1/5 ページ)

» 2008年12月17日 13時10分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 富士重工業は12月16日、18時から開かれた緊急会見でWRC(世界ラリー選手権)からの撤退を表明した。富士重工業はWRCで、1995年から3年連続マニファクチャラーズ部門優勝を果たした名門。スズキも15日にWRCのレース活動の休止を発表しており、これでWRCに参加する日本の自動車メーカーはなくなることとなる。会見に臨んだ森郁夫社長は「WRC参戦の目標はおおむね達成した。これからは別の方法でスバルらしさを訴求していきたい」と話した。

 以下、森郁夫社長が冒頭に行った会見内容を紹介する。

WRCへの参戦を卒業

富士重工業の森郁夫社長

 本日は富士重工業が2008年をもちましてWRCのワークス活動終了を決定したことをお伝えしたくて、説明の機会を設けさせていただきました。

 富士重工業はスバルブランドの認知向上、及びイメージ確立への取り組みとして、WRCのトップカテゴリーでの競技に19年にわたって参加してまいりました。

 スバルは水平対向エンジンとシンメトリカルAWDという独自技術をコア技術として、世界中のあらゆる道を舞台に、どのような環境の中でも安全に快適にクルマで走る楽しさ、喜びを多くのお客様に伝えようと努めてまいりました。そのイメージを伝える最適な方法がWRCだったと思います。

 WRCでは3度のマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得、3人のドライバーズチャンピオンを輩出し、当初の目的でありました「スバルブランドの価値を大いに高める」ということができたと思っております。また量産車の開発に、WRCで得たさまざまなノウハウをフィードバックしていることも大きな成果だと言えます。

 しかし、ここ数年勝利が遠ざかっているということもありまして、将来のスバルのブランディングのためにモータースポーツやWRCをどういう位置付けていくかを経営計画の中で検討を進めてまいりました。そして当初の目的はおおむね達成したという判断から2009年末でWRCのトップカテゴリーへの参戦を卒業するという考えを持っておりました。

 そのような中で今年の秋以降、米国の金融危機に端を発する世界的な経済混乱によりまして、先進国、新興国の境なく自動車市場が大幅に縮小するなど、弊社を取り巻く経営環境も急激に悪化しているというのが現状です。経営をつかさどる立場としては、スバルブランドを守るために選択と集中の一刻も早い判断が求められたということです。

 スバルのワークスチームでありますSWRT(スバルワールドラリーチーム)を応援してくださっている本当にたくさんのファンの方々のことを思うと苦渋の決断ではありましたが、予定を1年前倒しして、今シーズン2008年をもってスバルのWRCワークス活動を終了することにいたしました。

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