スバルはなぜWRCから撤退するのか――社長会見を(ほぼ)完全収録(2/5 ページ)

» 2008年12月17日 13時10分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 今後のスバルのモータースポーツへの関わり方については、この場ですべてお話をする形にはまだまとまっていません。しかし、ラリー活動では、量産車カテゴリーのGroup Nクラス、およびその車両を用いた世界選手権のPWRC活動に参加されているチーム、ドライバーへの車両供給などの活動支援は続けてまいります。

 さらにローカルイベントにおける活動支援や、体験参加型のモータースポーツイベントの開催など、モータースポーツのすそ野を広げる取り組みを検討していきたいと思っています。先ほども申し上げました通り、スバルは「車で走る楽しさ、喜びをより多くのお客様に伝えたい」と考えております。このことはこれ以降も変わることはございません。

インプレッサ(出典:富士重工業)

 しかしながらこれまでを振り返ってみますと、もしスバルがWRCの活動に取り組んでいなかったら、現在のレガシィやインプレッサを始めとするスバル車の魅力や個性をお客さまに伝えることは、今のようにうまくできていなかったのではないかとは思っています。日本だけはなく世界中にいるスバルのお客さま、ファン、ユーザーにとってWRCのスバルは大きな存在であることは言うまでもありません。

 量産車カテゴリの取り組みには今後も力を入れてまいることはお伝えした通りですが、WRCでトップを走る青いインプレッサはスバルの象徴であり、この決断をしなければならなかったことは本当につらいことでありました。世界各国でスバルブルーのウェアを身にまとい、ラリー観戦に来ていただける。競技車が駆け抜けていく沿道やコーナーが青一色に染まっているのを目にすると、私やスバルにかかわる人間は本当に(胸が)熱くなるということがありました。このお客さま方にスバルをもっとよく提案していきたいと勇気付けられもしました。

 日本でも5年前からラリージャパンとしてWRCが北海道で開催されてきました。日本人の中には何百キロも車に乗って、北海道までスバルを応援するためにお越しいただき、会場でもスバルの旗を精一杯振っていただいている方々がいらっしゃいます。世界中のスバルファンの熱心な応援に本当に感謝しておりますし、こうしたファンの方々はスバルの大きな財産だと改めて肝に銘じております。

ラリージャパン公式Webサイト

 これまでと違う形になりますが、快適、信頼の新しい走りと地球環境の融合を実現したスバルの商品。言い換えますと、クルマに乗った時に高い安心感に包まれながら走る喜びを味わえる、こうしたスバルならではの魅力的な商品、さらにはサービス、カーライフをお客様にご提供続けてまいりたいと思っております。今後はWRCにかかわるリソースを、お客様第一を旨として最大限活用して、スバルとお付き合いいただくことに一層ご満足いただけるように努めてまいりたいと思っております。

 なお、スバルのWRCの取り組みは英国のモータースポーツ専門会社でございますプロドライブというモータースポーツに対して優れた視点とスバルに対する情熱を持ったパートナーなしにはありえませんでした。

 プロドライブは1989年の契約以来、スバルのワークス活動を担ってまいりました。特に活動の創成期におきましては彼らの貢献、協力こそがスバルがトップチームの一角を占める原動力であったといっても過言ではないと思っております。代表のデビッド・リチャーズ氏に対しては会見に先立ちって私どもの感謝の意図、方針を伝えました。また、スバルのために献身的に走っていただいたドライバーのペター・ソルベルグ氏、あるいはクリス・アトキンソン氏の2人は勝利を目指して精力的な努力を積み重ねてくれました。私どもにできることであれば彼らの今後の活動を支援し、恩に報いたいと考えております。

 最後に改めてこれまでご声援いただいた多くのファンの皆様、弊社のWRC活動を支えていただいたスタッフ、関係者の皆さん、そしてFIAを含めWRCの関係者の皆様に心より御礼を申し上げたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

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