ひとりで作るネットサービス:データ蓄積=コミュニケーション!? 「テレビジン」で視聴率じゃない指標を――福田さん
元々部活動のWebサイトを作るような高校生だった福田さん。今では2ちゃんねるの書き込みから「笑い」を可視化する「テレビジン」をオープンした。「従来までの視聴率に代わる新しい指標が導き出せないか、いろいろ考えています」という福田さんに話を聞いた。
ひとりで作るネットサービス第47回は、どのテレビ番組が盛り上がっているかをリアルタイムで把握できる「テレビジン」を作った福田一行さん(27)に話を聞いた。さまざまなデータを溜め込むことで、たくさんの人のコミュニケーションを活性化したい――。そんな福田さんは何を目指しているのだろうか。
初めてのWebサイトは中学校、高校では部活のブログ
「3歳のころにすでにコンピュータを使って絵を描いていたようです、そういえば」。「初めてのPCは」と聞くと、福田さんは笑いながらそう答えてくれた。小さいころからコンピュータやゲームに興味があり、中学校の授業では、初めてのWebページを作ったという。
「うちの学校はかなり進んでいた方だと思います。インターネットに詳しい先生がいたのが大きかったのですが」。授業ではHTMLを習い、放課後は生徒会室にあるPCを使ってゲームプログラミングにのめりこんだという。ただ、そのときはインターネット自体にそれほど興味があるわけでもなかった。「まだWebページが少なかったこともありますが、検索エンジンなども、どう使っていいか分かりませんでした……」
しかし高校に入ってから、状況は一変した。合唱部に所属していた福田さんは技術に明るい先輩に教えられて部活のWebサイトを作り始めた。今で言うところのブログのような日記システムも導入し、卒業生と現役生が会話できるように掲示板まで設置した。「たわいのないやりとりでしたが、これらのシステムは部活内で相当盛り上がりました」。「インターネットを使ってたくさんの人がコミュニケーションをとれる、それがすごく楽しかった」と福田さんは言う。
大学もインターネットやコミュニティに詳しい学部に進学した。そこで本格的にプログラミングを学び、システムやWebサイトを作るアルバイトにのめりこんでいった。ある仕事では、企業のイントラネット構築も手がけた。また別の仕事ではクライアント向けのサイト制作も手伝った。こうした経験を通じてプログラムの軽量化やサーバ管理、デザイナーと分業しながら制作を進める術などを身につけていったという。
卒業後はメーカーに勤めつつも、友人たちと一緒に、ブログで話題の記事を抽出するサービス「話題の.jp」を開設した。メーカーの仕事は全国を飛び回るやりがいのあるものだったが、話題の.jpの運営も楽しくてしょうがなかった。運営を続けるうちに、いつしかもっとコミュニティよりの仕事がしたいと思うようになっていったという。
コミュニケーションに興味あり――AMNに転職、その後は……
漠然と転職を意識しつつも、何気なく顔をだしたイベントが、人生の転機となった。ブログを使ったマーケティングを展開するアジャイルメディア・ネットワーク(AMN)の徳力基彦氏に会ったのだ。ちょうどブログを分析する話題の.jpを運営していたこともあり、ぐっとお互いの距離が縮まった。「AMNに行けば、おもしろい人とたくさん会えそうだ……」。コミュニティやコミュニケーションに興味のある福田さんはそう思い、3年間勤めたメーカーを2008年に辞めて、AMNに移ることを決心した。
実際、AMNに入ったあとは個人でWebサービスを作る人たちとたくさん会うことができた。会社員でありながらもケータイからTwitterがチェックできる「モバツイ」を作っていたfshin氏(現在は独立)、読書記録をWeb上で管理できる「読書メーター」を作った赤星琢哉氏などには大いに刺激を受けたという。
AMNで仕事をこなしつつも、そうした刺激から作り上げたのが「ついったーランキング」(現在はTwittyに改名)だった。「話題の.jpを作っていたときにWeb上のデータをクロールする楽しさを覚えました。そこでTwitterのデータをいじってみよう、と思ったのです」。ついったーランキングではTwitter上で引用されるURLのランキングや、どのユーザーが一番言及されているか、どのユーザーとどのユーザーがもっとも会話をしているか、などをまとめて見ることができた。データをいじればいじるほど、アイデアは次々と湧いてきた。
「ただ、Twitterのユーザーが急激に増えすぎて、分析が追いつかなくなってしまったのです」。アイデアはいろいろとあったが、データ処理に時間がかかりすぎ、多くの機能をあきらめざるを得なかった。今は言及されるURLのランキングのみを取り扱っている。ただ、こうした経験はTwitter上でのクチコミがどのように広がるかを理解するのに役立ち、本業へうまくフィードバックできているという。
データ分析で目に付けた「テレビジン」
もっとさまざまなデータをいじってみたい……。そう思っていた福田さんが次に目をつけたのが「テレビ」だった。「話題の.jpでどういう風にクチコミが起こるかをみていると、やはりまだまだテレビの影響力が大きいことが分かったのです」。どのテレビ番組が盛り上がっているか、どうにかして可視化できないだろうか……、福田さんの試行錯誤が始まった。
そうして生まれたのが「テレビジン」だった。このサービスでは2ちゃんねるの「実況版」を監視することで、どの番組にどれぐらいの書き込みが行われているかをはじき出すというもの。さらに「www」「キター」といった用語も合わせて計測することで「その番組中でどれぐらい笑いが起きているか」も可視化することに成功した。
「従来までの視聴率に代わる新しい指標が導き出せないか、いろいろ考えています」。テレビジンに蓄積したデータを今後どうやって活用するか、福田さんは思いをはせる。「NHKオンデマンドのように、今後はテレビのコンテンツがネット上にデータベース化されていくのではないでしょうか。テレビジンはそうしたデータベースへの導線になれれば、と考えています」
将来的には「誰がどんな番組を見たか」まで管理できないだろうか、とも思っている。「そうすればより身近な人がどんな番組を見たか、また、その人たちの傾向も分かるようになります。もしかしたらどの番組が盛り上がるか、あらかじめ予測することも不可能ではないかもしれません」
データを蓄積することで、ネットの向こう側にいる「その人のひととなり」を知りたい……。そうすればもっと便利なサービスが作れるはず。福田さんのモチベーションはそこにある。高校のときに作った掲示板で部員たちや卒業生が盛り上がってくれたように、人の役に立つWebサービスを作っていければ――。福田さんはそう考えているのだ。
バックナンバー
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