インタビュー
田口元の「ひとりで作るネットサービス」探訪:
シンプルなツールをシンプルな生き方で──Plnet.jp・駒形さん
少人数でシンプルなツールを作る「37Signals」に憧れた。Plnet.jpを作っていく中で、1人でもサービスを作ることができると知った。一方で自分に足りないことも知った。生活も仕事もシンプルを心がける駒形さんのスタイルとは──。
「1人で作るネットサービス」第13回目は、ブログやブックマークなど、自分が管理している情報を一元管理できるサービス「Plnet.jp」を開発している駒形真幸さん(29)にお話を伺った。「将来的には1人で作ったサービスで生活していきたい」と語る彼の開発ポリシーや仕事術はどういったものだろうか。
目標は「37Signals」。シンプルなツールを少人数で
「飲み会などでよく『こういうサービスあるといいよね』という話になりますよね。そういうときに『そんなのすぐ作れるよ』ってよく言っていたのです。でもそう言いながら『だけど作らないだろうなぁ……』とも思っていました。そうして何も作らないくせに適当なことを言っている自分が嫌いで。そこで作ったのがPlnet.jpでした」
Plnet.jpは2006年9月に、前の会社の同僚と2人で作り上げた。同僚は以前海外に住んでいたので英語化とコードの一部を担当。それ以外のほとんどの部分は自分で作り上げた。このサービスでは自分のブログや写真、ブックマークなど、「自分」を表現しているデータをまとめて表示することができる。なぜこのようなサービスを作ったのだろうか。
「この当時は職がなくて。自己紹介をするのに適当なサービスがなかったので自分で作りました」。駒形さんは東京都の八王子出身。高校のときからコンピュータに触れていたが当時は「あまり面白いものだと思わなかった」という。その後、就職し、システム会社を転々とした。その間に数々の言語を習得した。「C、VisualBasic、Perl、PHP……。今はRubyですね」
自分でも認めるほどの「飽きっぽい性格」だ。仕事をしていてもほかに興味があることがあればついついそちらにのめりこんでしまう。結果として転職を繰り返し、職がない期間もあった。その間に作り上げたのがPlnetだ。
Plnetのリリース後は、ソーシャルブックマークをはじめ、さまざまな反響があったが、「1人でもサービスを作ることができる、と分かったことが一番大きい」と話す。将来的には自分でいくつものサービスを作って、それで食べていければ、と夢を語る。
あこがれているのは「37Signals」。シンプルなツールを少人数で作るというワークスタイルが目標だという。「1人でサービスを作れると分かったので、自分が勉強すべき分野、逆に今は勉強しなくてもいい分野がはっきりしました」駒形さんはそう話す。
また、1人でサービスを作って食べていくにはプログラミング以外のスキルも必要だと分かった。サービスを作っただけでは誰も見てくれない。それをどう広めるか、そしてそこからどうお金を生み出していくのか。まだまだ勉強すべきことはある──。そう思っていた時に出会ったのが現在勤めている会社、ウノウである。
「アイデアを育てる土壌がある」会社、ウノウとの出会い
「うちの会社に遊びに来ませんか」、ウノウの社員から連絡が来たのは2006年末のことだった。駒形さんがブログに「無料のサービス作ったりしてる場合じゃないっ! 就職しないと」と書いたのがきっかけだった。
ウノウといえばオンライン写真共有サイトの「フォト蔵」を展開している。サービスを多くの人に使ってもらってビジネス化していくプロセスはどうなっているのだろう、それが勉強できるのではないか──と駒形さんは考えた。しかもフォト蔵は英語版も提供している。目標としている37Signalsのように世界を相手にする方法も学べそうだった。誘いを受けた駒形さんは渋谷のオフィスに遊びにいった後、面接を受けて無事に入社する。
ウノウの山田進太郎社長のアイデアから駒形さんが作り上げた「Tileplex.jp」。商品と商品をつなげるサービス。※注:7月11日現在、Tileplexはユーザーのメールアドレスなどが外部から取得できてしまう不具合が発見され、サービスを停止している。(告知)「最初はウノウの仕事をしながら個人でもサービスを作っていこうと思っていたのですけどね」。そう考えていた駒形さんの目論見は良い形で外れた。ウノウでは「思ったよりもずっと自分のやりたいことを仕事としてできることが分かりました」という。先日発表された「Tileplex.jp」もウノウの山田進太郎社長のアイデアに賛同した駒形さんが、中心となって作り上げたものである。Tileplexは「商品と商品をつなげていくことで何かが見えてくるのではないか」というコンセプトのもとに作られている。シンプルなコンセプトのサービスを作りたかった駒形さんにとって熱中できるプロジェクトだという。
ウノウには「事業提案制度」がある、と駒形さんは教えてくれた。アイデアを思いついた人は誰でも社長にプレゼンテーションができる。その結果、社長と副社長が承認すればそれを自分の仕事とすることができるのだ。しかもそのプロジェクトが事業として独り立ちできるようになったら、発案者には賞金100万円が贈られるという。
いまのところ、そこまで至ったプロジェクトはまだないが、ウノウには「アイデアを育てる土壌がある」と駒形さん。社内では頻繁にブレストへのお誘いがある。時間がある人が集まって自由にアイデアを膨らませるウノウのブレストを見ながら、「初めてブレストがブレストとして機能している会社だな」と思ったという。
ブレストとはいいながら自由なアイデアが出しにくい会議は何回も経験してきた。しかしウノウのブレストは違った。「くだらないアイデアも気軽に出せるし、そうしたアイデアからどんどん新しいアイデアが出てくるのを何度も目の当たりにしました」
会社から自分に足りないものをどんどん吸収しつつ、個人でのサービス開発も進めていきたい、と駒形さんは考えているという。
「なるべくカスタマイズしない」ことを心がける

ごちゃごちゃしているものが嫌い、という駒形さんの仕事術はとにかくシンプルだ。「いつも鞄の中に入っているものは何ですか?」と聞くと、出てきたのは空のカバン。「自転車通勤ということもありますが、とにかく何も持っていないのです」。紙とペンも持ち歩いていない。メモをとるときはオンラインツールの「check*pad」を使っている。check*padには日々のToDoから、将来作りたいサービスのアイデアまでさまざまなことを書きとめ、時間があるときに見直しているという。
メールは「Gmail」、スケジュールは「Googleカレンダー」、ブラウザは「Firefox」、エディタは「Vi」。普段から気をつけているのは「なるべくカスタマイズしないこと」。どこからでもいつも使っている環境が使えるように気を使っている。
また「自分のブログは勉強道具、ですかね」と言い切る。なにかを勉強するときには「ブログに書けるぐらいまでは調べよう」と考える。ブログに自分の調べたことを書くと反応がある。その反応を見ていると次に勉強することが分かってくるからだ。
やる気のないときは身の回りのものを整理する。部屋の整理や掃除、ブログのテンプレートをシンプルにしたり、OSの再インストールなどをしていると気分がすっきりしてくるという。
シンプルな生活を心がける駒形さんは、価値観もシンプルである。なにか難しい判断を下さなくてはいけないときは「半年前の自分に勝てているかな?」と考えるという。「逆にちょっとでも半年前の自分が手ごわいな、と感じたら何かを始める時だと思っています」
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