第9回 専門知識を身体感覚で理解させる方法(前編)新入社員がやってくる──専門知識を教える技術(5/5 ページ)

» 2008年05月07日 20時01分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]
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特別損益っていったいなーに? のイメージを持ちやすい教材の提示方法を考える

 そこで、実際にある課題を使って、「学習者がイメージを持ちやすいような教材の提示方法」を考えてみましょう。といっても既にかなり長くなりましたので、今回は課題テキストを掲載するにとどめ、実際の検討は次回に行います。その課題テキストは、以下のとおりです。財務諸表を構成する概念の話でしかも少々長いですが、会計の知識がなくても分かるように書いてあります。

特別損益

 企業はさまざまな活動を行い、その活動に伴って利益が出たり損失が出たりしますが、その利益や損失には「営業損益」「営業外損益」「経常損益」「特別損益」といった区別があります。

 この区別の背景には、そもそもの企業の活動を

  • A)継続的に発生するもので、その会社の本業に該当する活動
  • B)継続的に発生するもので、その会社の本業ではない活動
  • C)継続的に発生しない、その時限りの活動

 の3種類に分ける考え方があります。例えばソフトウェア会社がソフトウェアを開発し販売するのはA)に該当します。ここから得られる利益を「営業利益(赤字の場合は営業損失)」と言います。

 その同じソフトウェア会社で、お金が余ったからといって他社にお金を貸して利息を取ったとしましょう。その場合、利息は継続的に発生しますが、しかしそれはその会社にとっての本業ではありませんので、B)に該当します。ここから得られる利益(損失)を「営業外利益(営業外損失)」と言います。(ちなみに、これが銀行であれば、お金を貸して利益を上げるのは銀行にとっては本業なので営業利益になります)

 一方、企業活動には不確定の「事故」もしばしば発生します。例えば盗難にあう、火事を起こす、地震でビルが倒壊する、といったケースですね。このような事故は異常事態であって、継続的に起きるものではありませんので、C)に該当します。こうした特別なケースで発生する利益や損失を「特別利益(特別損失)」と言います。最近では、リストラのために希望退職者を募集した場合に、一括して発生する割増退職金などが特別損失になる項目として有名です。

 一般の会社ではお金を貸すよりも借りているところが多いため、営業外の項目は利益ではなく損失になることが多く、また営業外利益がある場合でもその額は営業利益よりもかなり小さくなるものです。

 営業利益と営業外利益はいずれも継続的に発生するものです。そこでこの2つを合算したものを「経常利益」と呼びます。


 以上です。特に「特別損益とそれ以外の項目との違いをどう表現するか?」という観点に注目して考えてみてください。では、実際の検討は次回に回します。

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筆者:開米瑞浩(かいまい みずひろ)

 IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『図解 大人の「説明力!」』


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