第9回 専門知識を身体感覚で理解させる方法(前編)新入社員がやってくる──専門知識を教える技術(1/5 ページ)

スポーツで重要な「身体感覚」。実は、スポーツのような体を動かすことだけでなく、論理的なことでも“身体感覚”が重要なのです。

» 2008年05月07日 20時01分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]

 “専門知識の教育”をテーマにとことん解説するこの連載。今回はちょっと趣向を変えて「身体感覚」について考えてみましょう。

 実は私はいまだに自動車の免許を持っていないので分からないのですが、車を運転するためには「車体感覚」というものが必要だそうですね。「車体感覚? なにそれ?」と、ある知人に聞いてみたところ、こんなふうに教えてくれました。

知人 要するに車体が空間的にどのへんまで広がってるかってことを、自分の身体のように把握する感覚のこっちゃ。これがないと、例えば狭い路地曲がるとか縦列駐車する時に、横っ腹こすったりバンパーぶつけたりするわけや。

開米 自分の身体のようにって、するってーと何か? 運転してる時は自分の身体が車体いっぱいに膨らんだみたいな感覚でいるわけか? 例えばそれが大型トレーラーみたいなバカでかい車でも?

知人 まー簡単に言うとそういうこっちゃ


 さて、この話が本当かどうかは私は何しろ免許を持っていないので分かりませんが、同じような話を多くの人から聞くのできっと本当なのでしょう。要するに人間は、

  • 道具を使うことに熟練すると、その道具がまるで自分の身体を延長したものであるかのように感じるようになる

 のです。その理由は「身体感覚というのは手足の働きではなく、脳内の情報処理の働き」だからです。そのことを示したのが図1です。

 通常は人間は自分の脳で手足の状態を感じ取り、動きをコントロールしています。しかし、「手足」ではなく「道具」であっても、同じように「状態を感じ取り、動きをコントロールする働き」を脳内に作ることができれば、道具をまるで手足のように感じ取れるようになります。もちろん、そのためには「道具」に熟練するための長いトレーニングが必要ですが、間違いなくできるんですね。

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