第9回 専門知識を身体感覚で理解させる方法(前編)新入社員がやってくる──専門知識を教える技術(2/5 ページ)

» 2008年05月07日 20時01分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]

「道具」は論理的な概念であってもよい

 そして実はこの「身体感覚の延長」現象は、モノではなく論理的な概念を「道具」として使う場合も起こります。結局のところ「身体感覚」というのは人間の身体そのものではなく「脳の働き」なので、

  • 人がある概念に習熟すると、その概念を通して対象物を認知する時に、まるで自分の手足で触って動かしながら考えているかのように感じ取れる

 ようになるわけです。

 例えば私は高校時代に数学を勉強していた時に、よくそういう経験をしていました。つまり数学的な概念を、頭の中でちぎったりつないだり伸ばしたりして考えていたわけです。そうすると、式を立てて計算する前にだいたいの結末が見えるので、途中で計算を間違えて変な答えが出ても「あれ? おかしいな、これは」と気がつきます。

 逆に、計算して出した答えが、身体感覚で見積もったものと一致していれば、それで検算が終わったようなものですから「よしオッケー!」と安心して次に進めます。よく、「数学を勉強するには公式を丸暗記してはいけない」と言われるのも、「丸暗記では身体感覚にならない」からなのでしょう。

 では逆に、論理的な概念を身体感覚にまで定着させるためにはどうすればよいのでしょうか? 当然、「論理的なしくみの理解」はもちろん必要です。しかし、「理解がすべて」とも思えません。身体感覚にまで至るためには、もう1つ欠かせない要素があります。それが「イメージを伴う繰り返し試行」です。

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