第58鉄 竹取伝説と富士山とつけナポリタン――岳南鉄道杉山淳一の +R Style(4/5 ページ)

» 2012年06月08日 11時18分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

かぐや姫伝説の発祥の地

竹林の道を歩く(クリックすると拡大)

 無人の改札を通ったら、駅舎の天井に「竹採公園」の文字。駅前の案内図を見ると、歩いていけそうな距離だ。かぐや姫伝説の発祥の地なんだとか。公園には桜もあるだろうし、予定に入れていなかったけど行ってみよう。駅前の道を20分ほど歩くと、桜が満開の中学校がある。その手前を右に曲がってしばらく歩くと竹採公園だ。

 竹取物語の発祥の地は全国にあり、吉原の場合は竹取物語に不死山(富士山)が登場することが根拠となっているらしい。富士山本宮浅間大社にも竹取物語によく似た話が伝わっているのだとか。竹取物語は、姫が月に帰るというパターンと、富士山に帰るというパターンがあるそうだ。竹採公園には桜はなかったけど、竹林の散歩道があった。順路には「神来の庭」「竹採塚」「神授の竹」「国司の庭」などと伝説ゆかりのしつらえがあった。15分ほどで巡回完了、いい散歩道だった。

竹採公園へ向かう途中。花の多い町だ。人知れずお世話をなさる方に感謝
伝説の地、竹採公園。20分ほどで1周できる(クリックすると拡大)

道に迷って機関車の駅へ

 竹採公園のある道をさらに進むと、桜が咲く丘がある。岳南忠霊廟という。岳南忠さんのお墓ではなくて「明治以来の国難に殉じた英霊936柱を祀るところ」だそうだ。桜の木の間から、岳南の町を見下ろせる。あちらこちらから煙突が伸びて、白い蒸気をもくもくと送り出している。富士山と丹沢山系に抱かれ、産業が息づく町。SF映画の背景にもなりそうで、人々の活力が伝わってくるようでもある。

岳南忠霊園から街を見渡す。煙突はこの街のシンボルだ(クリックすると拡大)

 比奈駅って竹取物語の「雛」に由来するのかな……などと考えながらぼんやりと歩いていたら道に迷った。iPhoneで地図を表示し、GPSで現在地を確認。ここからだと、比奈駅と次の岳南富士岡駅が同じくらいの距離だ。ならば岳南富士岡駅へ向かおう。大きな煙突を、常に右側に見て歩けば着くはずだ。あとで岳南出身の知人に聞いてみたら、このへんの子供たちは、遊びに夢中で遠くに行ってしまっても、煙突を目印に家路にたどり着くそうだ。

 道すがら、遊水池で遊んでいる子供たちがいた。楽しそうなので様子を見に行くと、小魚を採って遊んでいる。「見せてもらっていい?」と聞いたら、池の縁に容器を並べてくれた。稚魚のような小さな魚たち。容器のひとつひとつが庭のように飾られている。「伝説のデカがいるんだよ……いた! ほら!」とすくい上げた。本当だ、他の魚よりひと回り大きい。

 「おじさん、何しにきたの? カメラマン?」「いや……つけナポリタンを食べに来たんだ。お腹いっぱいでお散歩だ」「あ、私たちもつけナポリタン、食べるよ。給食で出るの。あとで感想を書くの」

 おお、つけナポリタンの開発チームに小学生も参加していたとは!

遊水池で子供たちが作っていたビオトープ(?)

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