第58鉄 竹取伝説と富士山とつけナポリタン――岳南鉄道杉山淳一の +R Style(2/5 ページ)

» 2012年06月08日 11時18分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

お昼ご飯に吉原本町の「つけナポ」を食す

 岳南鉄道の吉原駅は、東海道本線の吉原駅から跨線橋を渡った先にある。間にある線路は貨物列車が使っていた。ひと月前まで、この線路にはワム80000という青い貨車がいくつも並んでいた。全国で貨物輸送の主力だったワム80000も、コンテナ貨車の普及で廃車が進み、この地が最後の任地となった。鉄道ファンにとって岳南鉄道は「ワムの聖地」と注目されていた。しかし、2012年3月のダイヤ改正でその貨物輸送が終了してしまった。

東海道線吉原駅付近は、富士山がとても大きく見えるエリア。特に吉原駅ホームから北側を眺めると、工場越しに富士山が大きく見える
東海道線のホームから岳南鉄道吉原駅を見る
岳南鉄道吉原駅。貨物輸送終了を受けて「乗って残そう」の横断幕が掲げられた

 岳南鉄道ではその直前に「機関車・電車まつり」を開催し、私も取材で訪れている(参照リンク)。あの日の取材は無事終わったけれど、地元吉原名物のB級グルメ「つけナポリタン」を食べそこねた。そんなわけで今回の旅の第1目的は「つけナポを食す」である。あの日は鉄道施設から離れなかったから、今回は街歩きも楽しみたい。吉原駅で400円のフリーきっぷを買い、1両単行の電車に乗って、まずは2つ先の吉原本町駅で降りた。

 吉原本町はきれいな街だ。歩道にはサンルーフの屋根がつき、車道の舗装も整っている。電車のお客の半分が若い女性で、そのほとんどがこの駅で降りた。おしゃれだし、表情が明るい。地元の製紙産業がこの街をしっかり支えているんだなあ。

電車は元京王電鉄の3000系。片側に運転台を増設した1両単行型
吉原駅発車直後の景色。ここは東田子の浦港の一角だ

 「つけナポリタン」は、テレビ番組と吉原商店街がタイアップして創りだしたB級グルメ。つけ麺のように、麺をスープにつけて食べるスパゲティだ。トマトソースをベースとし、鶏ガラやコンソメ、などを組み合わせたWスープが基本。麺とスープは別々に提供するというお約束がある。それ以外は自由ということで、お店ごとに工夫を凝らしたつけナポがあるそうだ。

 商店街を歩いていくと、つけナポの普及を呼びかける「つけナポリタン大志館」があった。パンフレットをいただき「つけナポ」発祥の店「喫茶アドニス」へ。早く行かないと昼までに売り切れちゃうかも、と言われた時刻は13時。早足でたどり着いたら「ありますよ」との声。安心した。この店では「つけ富士リタン」というそうだ。

 スパゲティのようでラーメンのような特注麺を使っていて、本来は桜えびを絡めて炒めて香りを出すという。しかし魚介が苦手な私は桜えび抜きでオーダー。トマト色のスープは鶏ガラベース。具には半熟卵ととろとろチーズ。歯ごたえしっかりの鳥チャーシューが嬉しい。噛むと旨みがジュワッと出てくる。

これが吉原の新名物「つけナポリタン」850円(喫茶アドニス、左)。吉原宿のなごり? 素泊まり3450円は安い。泊まりがけでつけナポ食べ比べもいいかも(右)

吉原本町駅から続く商店街には、つけナポリタンの店が散在する。案内所「つけナポリタン大志館」は交差点の先の左側にある
こちら、本連載の担当編集が「Cafe Sofarii」で食べたつけナポリタン。同じつけナポでも、店によってバリエーションはさまざま

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