知らず知らずのうちに“あの本”を読んでいる? ビジネス書の10年を振り返る水曜インタビュー劇場(読書公演)(2/7 ページ)

» 2015年05月27日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

2004年に売れたビジネス書

2004年、ビジネス書のベストセラー(トーハン調べ)

土肥: かつて「株価が上がれば投資に関連する本が売れる」といった現象が起きていました。しかし2014年のビジネス書ベストセラーをみると、いわゆる投資本は1冊もランクインしていません。日経平均株価をみると、2013年1月4日(1年間の取引の初日)は1万688円(終値)だったのに対して、2014年12月30日(1年間の取引の最終日)には1万7450円(終値)。実に7000円ほども上昇しているのに。

 ちなみに、10年ほど前も株価は大きく上昇しました。2004年1月5日は1万825円だったのに対して、2005年12月30日には1万6111円。この間に5000円以上も上昇し、書店にはたくさんの投資本が並びました。2004年のビジネス書ベストセラーをみると、2位には『株の自動売買でラクラク儲ける方法』(ザイ編集部、ダイヤモンド社)、7位に『株はあと2年でやめなさい そして2008年、修羅場がやってくる』(木戸次郎、第二海援隊)、8位に『毎月10万円は夢じゃない!「株」で3000万円儲けた私の方法』(山本有花、ダイヤモンド社)がランクイン。このほかにもお金に関する本がよく売れているんですよ。

 どちらの時代も株価は大きく伸びているのに、なぜ売れ筋の本に違いが出ているのでしょうか?

苅田: 2004年から2014年の間に、どういったビジネス書が売れているのか分析してみました。その結果、キーワードとして「なりたい自分」が浮かび上がってきました。

土肥: なりたい自分? どういう意味でしょうか?

苅田: 2004年にどういったことがあったのか。経営状況が厳しいプロ野球チーム「大阪近鉄バッファローズ」を買収しようとして、ライブドア(当時)の堀江貴文さんが大きく注目されました。堀江さんの『稼ぐが勝ち ゼロから100億、ボクのやり方』(光文社)も6位にランクインするなど、お金に関する本が上位にズラリと並んでいます。なぜこうした現象が起きたかというと「自分もお金持ちになりたい」と欲望の主眼がお金に向いていた時代だったのではないでしょうか。

 ドイさんがご指摘されたように、2003年1月から2004年12月にかけて日経平均株価は大幅に上昇していますが、2014年の1年間だけでみると664円しか上がっていません。狭いレンジで推移していたので、多くの人が「どうにかしてほしい」と閉塞感を覚えていた。そうした環境の中で、堀江さんが登場。「今の時代の成功者は彼なのか」「閉塞感が漂っているけど、彼だったらそれをぶち破ってくれるかもしれない」と期待されていました。

土肥: “時代の寵児”とも呼ばれていましたからね。

苅田: 「自分はお金持ちになりたい」という人が増え、株や金儲けに関する本がとにかく売れました。

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