「じぇじぇじぇ」の次は、ばばばっ旨めぇ?――高校生が考えた気仙沼「なまり節ラー油」新連載・東北発! 震災から生まれた21世紀の逸品(2/4 ページ)

» 2014年03月13日 08時00分 公開
[加藤小也香,Business Media 誠]

若者の地域離れが続けば、復興どころではなくなる

 震災をきっかけに始まった、なまり節ラー油の開発。開発や販促メッセージの立案は、気仙沼にある3つの高校(気仙沼、気仙沼向洋、気仙沼西)から集まった総計30名あまりの高校生が行った。

 当初の計画ではなまり節の新しい食べ方を提案するだけだったのだが、「それではもったいない。高校生がここまでのものを作ったのだから、いっそ市販しては?」と、地域の大人たちが商品化に協力する展開に。原料のメインを占めるなまり節は日渡水産代表の昆野文男氏が、常温流通可能なライン生産はカネダイ常務・佐藤俊輔氏と、水産食品部製造部・三浦博氏が……といった具合でたくさんの大人たちが立ち上がった。

 初期ロットの生産費用140万円は、クラウドファンディングの「READYFOR?」で集め(参照リンク)、パッケージデザインはHAKUHODO DESIGNの協力を得た。プロモーションに際しては、被災地の事業者と様々な技能を持ったプロボノ※を結びつけるプラットフォーム「イノベーション東北」(参照リンク)で出会った人々にも手助けを求めた。例えば、気仙沼出身で、ウェブ会社スタビライザーを経営する小松雅直氏、著名料理ブロガー「筋肉料理人」(参照リンク)……といった面々だ。小松氏は東京在住、筋肉料理人は九州の在住。始動から1年で、プロジェクトは徐々に地域の枠を越える活動となっていった。

 きっかけを作り、これら“チーム”をまとめていったのが、学生を対象としたイノベーション教育を提供しているi.club(参照リンク)の代表・小川悠氏だ。

※プロボノ……さまざまな分野の専門家が、それぞれの持つ知識やスキルを生かして社会貢献するボランティア全般。

地域資源「ドライフード」の価値を再発見しよう

 小川氏は、気仙沼の出身というわけではない。東日本大震災の発生当時、東京大学 i.schoolの学生だった小川氏は、「若者の地元離れを食い止めないと、地域再生どころではなくなってしまう。これは被災地だけでなく、日本全国にも共通の課題だ」という危機感を抱いた。そして「地元の価値を再発見し、一緒に活動したいと思える仲間やロールモデルとなるような大人と出会い、いずれ地域でも働いていけるという可能性を見つけられれば、故郷に残りたい若者もいるのではないか」と考えるに至る。その一助になれればと就職はせず、縁のあった気仙沼からまず活動を始めた。

後列右から2番目が小川氏、3番目がサイト制作などで協力した小松氏

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