大学7年生の学生が、途上国に“最高の授業”を届けられた理由仕事をしたら“なんちゃってグローバル君”がいた(4)(1/7 ページ)

» 2013年07月31日 08時10分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

仕事をしたら“なんちゃってグローバル君”がいた:

 グローバル人材とは、どのような人を指すのだろうか。総務省のグローバル人材育成委員会では、このように定義している。(1)主体的に物事を考え、多様なバックグランドをもつ同僚、取引先、顧客などに自分の考えを分かりやすく伝える(2)文化的・歴史的なバックグランドに由来する価値観を乗り越え、相手の立場に立って理解する(3)相手の強みを引き出して、新しい価値を生み出すことができる――。

 分かったような、分からないような。そんな人って、本当にいるの?――このような受け止め方をした人も多いだろう。とにかく会社からはTOEICの点数を上げろと言われているので、とりあえず英語を勉強する。外国人と英語で仕事ができれば、グローバル人材になれるだろう……といった“なんちゃってグローバル君”にならないためには、どうすればいいのか。

 本連載「仕事をしたら“なんちゃってグローバル君”がいた」では、海外で活躍してきた先人たちの声を紹介していく。厳しい環境の下で、結果を出してきた人から学ぶべきことはたくさんあるはずだ。トップバッターは、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出しているシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた田村耕太郎さんに話を聞いた。2番手は、国際教育支援NPO「e-Education」で代表を務める、税所篤快(さいしょ・あつよし)さんに登場していただいた。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。


 三田紀房さんの漫画『ドラゴン桜』(講談社)をご存じだろうか。元暴走族の教師が、落ちこぼれが集まった高校の生徒に受験勉強法を教え、東京大学に合格させようとするストーリーだ。

 それを世界五大陸で挑戦しようとしている男がいる。税所篤快(さいしょ・あつよし)さん――。早稲田大学教育学部の4年生……とはいっても、休学3年目の“7年生”だ。

 彼は大学を休んで、「五大陸『ドラゴン桜』」実現を目指して、世界を駆け回っている。とはいっても、漫画のように生徒は落ちこぼれではない。むしろ優秀だが、学ぶ機会に恵まれていない生徒が相手だ。途上国の多くは、家が貧しかったり、教師が不足している。そんな理由で、十分な教育を受けることができず、大学をあきらめる学生が少なくない。

 収入による教育格差、その先の就職格差を変えたい――。税所さんはそうした負のスパイラルを断ち切るために、バングラデシュの予備校でトップレベルの教師の授業をDVDに収録して、農村の高校生に届けている。

 この試みは、初年度からうまくいった。「東洋のオックスフォード大学」と呼ばれる名門大学に合格者を出すことに。彼はバングラデシュだけで終わらせるのはもったいないと考え、2012年から世界中で展開することにした。現在は、アフリカのルワンダ、中東のヨルダンとガザ、フィリピン、ベトナム、ハンガリー、インドネシアに広がりを見せている。

 まだ20代半ばの大学生が、なぜこのようなイノベーションを起こすことができたのだろうか。またグローバル社会で戦う上で、なにを大切にしているのだろうか。話を聞いた。

税所さんが取り組んでいる「e-Education Project」
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