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個人事業主だって「節税」したい――税金の計算方法を紹介しよう増税サバイブ術(2/7 ページ)

» 2013年02月26日 08時00分 公開

経費の決め方

 売り上げの集計ができたら次は経費だが、決算書に書かれた経費の項目には租税公課、荷造運賃、水道光熱費、通信費、広告宣伝費、接待交際費、損害保険料、修繕費、消耗品費、減価償却費、福利厚生費、給料賃金、外注工賃、利子割引料、地代家賃、貸倒金などとなっている。

 このように経費は多岐にわたっている。例えば固定資産税や自動車税は租税公課、宅配便は荷造運賃、切手代や携帯電話料金は通信費などに仕訳される。事業に関係する費用であればかなり広範囲が費用となる。専門書を買いに遠くの駅まで電車に乗れば、電車代も経費となる。ネットオークションで仕事用のデジカメを落札すれば、落札代金も送料も経費となる。

 自宅で仕事をする場合は事業と家事が混在する場合がある。水道光熱費、地代家賃、自動車に関する費用(ガソリン代、車検代、保険代、自動車税、駐車料金など)などは仕事で使う部分とプライベートで使う部分が混在するのでそれぞれ比率を設定しやすい安分する。

 現実的には正確に安分することは難しい。ガソリン代を奥さんが買い物に行った分を厳密に差し引くことはできないと思われる。電気代などもPCを仕事で使用した分を割り出すことは困難だろう。実際には家賃なら部屋数や面積、ガソリン代なら日数や走行距離などそれぞれ適当と思われる根拠で安分するしかない。

電気代の安分比率は予想以上に高かった:

 以前、筆者の自宅に税務署の人が税務指導(調査ではない)に来たことがある。その際に安分の話しとなり、税務署の人は「4割くらいですか」と言った。筆者が設定した値は2割だったので倍の開きがあった。その後、独立後に電気代が1.6倍に激増していることに気付き、節電大作戦を実施したことがある。その様子は東日本大震災直後に「目指せ35%省エネ、今だからこそ“本気の節電術”」で紹介している。

 筆者は今年1月に川崎市にオフィス(兼住居)を借り、現在は名古屋の自宅と川崎のオフィスを行ったり来たりしている。1月分の名古屋の自宅の電気代は対前年比で35%も減っていた。検針期間のうち5日は名古屋で仕事をしたので実質4割ほどを筆者1人で使用していたことになる。税務署の人の言った4割は近い値だったようだ。家族は働きに行ったり大学に行ったりバイトに行ったりと家にいない時間が長い。筆者は1度も外出しない日もあり、滞在時間が圧倒的に長い。部屋数などより滞在時間で算出したほうが正確に安分できたと思われる。税務指導が来るまでは2割しか経費にしていなかったのでチョット損した気分だ。


 売り上げと経費を集計し所得を導き出せば、その先は前々回のサラリーマンの所得税とほぼ同じとなる。

  • 所得−各種所得控除=課税所得

 所得から基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除など該当する控除を引くと課税所得を算出することができる。ここまではサラリーマンと同じだが、個人事業主ならではの控除がいくつかある。代表的なものの1つは前回の青色申告で説明した青色申告特別控除。複式簿記で記帳等をしていれば65万円が控除される。

目指せ65万円控除

 もう1つは小規模企業共済等掛金控除。詳細は後述する個人事業主の節税で説明するが、引退後の資金として小規模企業共済に加入していれば、年間に支払った掛け金の全額が控除の対象となる。サラリーマンは給与以外に退職金をもらう権利を毎月積み立てているが、個人事業主には退職金がない。毎月退職金を自分で積み立てるのが小規模企業共済だ。掛金は毎月1000円から7万円となっている。

小規模企業共済等掛金控除は節税効果大

 控除額を算出し課税所得が決まった後はサラリーマンと全く同じだ。課税所得額に応じた税率を掛けて所得税の納税額が決まる。現在確定申告を受け付けているのは平成24年分なので、復興増税を含まない税率で計算する。来年の確定申告は平成25年分となるので復興増税が加算される。

所得税の税率(課税所得×税率=所得税)

課税所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超〜330万円以下 10% 9万7500円
330万円超〜695万円以下 20% 42万7500円
695万円超〜900万円以下 23% 63万6000円
900万円超〜1800万円以下 33% 153万6000円
1800万円超 40% 279万6000円

 このように、個人事業主の所得税は売り上げ、経費のところはサラリーマンと大きく異なるが、控除はほぼ同じ、税率は全て同じとなっている。住民税もサラリーマンと同様な計算で納税額を求めることができる。各種控除、税率の計算、住民税の計算に関しては第2回の「知っていますか? サラリーマンの税金を算出する方法」、第3回の「サラリーマンでも節税、どのように?――住民税を算出」もあわせてお読みいただきたい。

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