庵野秀明館長「特撮博物館」から考える特撮とアニメの関係アニメビジネスの今(1/5 ページ)

» 2012年07月24日 08時00分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]

アニメビジネスの今

今や老若男女を問わず、愛されるようになったアニメーション。「日本のアニメーションは世界にも受け入れられている」と言われることもあるが、ビジネスとして健全な成功を収められている作品は決して多くない。この連載では現在のアニメビジネスについてデータをもとに分析し、持続可能なあるべき姿を探っていく。


 毎年好例となった東京都現代美術館におけるスタジオジブリ制作の企画展。毎年アニメをテーマとしたものだったが、今年は「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」ということで特撮がテーマである。すでに行った人もいるかと思うが、今回は特撮とアニメの関係性や、それを通じて見えてくる世界的な映像のトレンドについて述べてみたい。

『館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』にて

ジブリ制作、夏の東京現代美術館

 2003年から始まり、今年でちょうど10年目となるこの企画展。次表がテーマと動員数の推移である。いずれも甲乙付けがたい力作ばかりだが、入場者数的には「借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展」(2010年)が今のところトップ。日本映画美術の第一人者である種田陽平氏が『借りぐらしのアリエッティ』の劇中設定を再現するというコンセプトが評判を呼び、30万人近い入場者を集めた。会場の立地を考えると驚異的な数字ではないかと思う。

東京都現代美術館アニメ関連企画展(東京都現代美術館提供資料より)

回数 年度 タイトル 動員数
第1回 2003年 ジブリがいっぱい スタジオジブリ 立体造型物展 22万2174人
第2回 2004年 日本漫画映画の全貌 3万9425人
第3回 2005年 ハウルの動く城・大サーカス展 9万170人
第4回 2006年 ディズニー・アート展 18万2580人
第5回 2007年 ジブリの絵職人 男鹿和雄展 28万8104人
第6回 2008年 高畑・宮崎アニメの秘密がわかる。スタジオジブリ・レイアウト展 12万5605人
第7回 2009年 メアリー・ブレア展 19万7395人
第8回 2010年 借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展  29万5698人
第9回 2011年 フレデリック・バック展  6万4169人
第10回 2012年 館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技

 逆に、一番少ないのが「日本漫画映画の全貌」(2004年)だったが、内容的にはこれが一番濃かったように思える。特に大型判で255ページにも及ぶパンフレットには圧倒されたが、企画展だけのためにこのようなハイクオリティの歴史書を作るジブリの制作能力は抜群である。もし日本で本格的なアニメミュージアムを構想するならキュレーターはジブリ以外考えられない。

 また、ビックリしたのは「ジブリの絵職人 男鹿和雄展」(2007年)。アニメの美術に注目してくれるのはありがたいことだが、29万人以上が訪れたという事実に驚いた。実際に見に行ったら、入り口はもちろん、館内の至るところで行列ができていたが、『となりのトトロ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』の持つ力を実感した次第である。

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