今や老若男女を問わず、愛されるようになったアニメーション。「日本のアニメーションは世界にも受け入れられている」と言われることもあるが、ビジネスとして健全な成功を収められている作品は決して多くない。この連載では現在のアニメビジネスについてデータをもとに分析し、持続可能なあるべき姿を探っていく。
毎年好例となった東京都現代美術館におけるスタジオジブリ制作の企画展。毎年アニメをテーマとしたものだったが、今年は「館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」ということで特撮がテーマである。すでに行った人もいるかと思うが、今回は特撮とアニメの関係性や、それを通じて見えてくる世界的な映像のトレンドについて述べてみたい。
2003年から始まり、今年でちょうど10年目となるこの企画展。次表がテーマと動員数の推移である。いずれも甲乙付けがたい力作ばかりだが、入場者数的には「借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展」(2010年)が今のところトップ。日本映画美術の第一人者である種田陽平氏が『借りぐらしのアリエッティ』の劇中設定を再現するというコンセプトが評判を呼び、30万人近い入場者を集めた。会場の立地を考えると驚異的な数字ではないかと思う。
回数 | 年度 | タイトル | 動員数 |
---|---|---|---|
第1回 | 2003年 | ジブリがいっぱい スタジオジブリ 立体造型物展 | 22万2174人 |
第2回 | 2004年 | 日本漫画映画の全貌 | 3万9425人 |
第3回 | 2005年 | ハウルの動く城・大サーカス展 | 9万170人 |
第4回 | 2006年 | ディズニー・アート展 | 18万2580人 |
第5回 | 2007年 | ジブリの絵職人 男鹿和雄展 | 28万8104人 |
第6回 | 2008年 | 高畑・宮崎アニメの秘密がわかる。スタジオジブリ・レイアウト展 | 12万5605人 |
第7回 | 2009年 | メアリー・ブレア展 | 19万7395人 |
第8回 | 2010年 | 借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展 | 29万5698人 |
第9回 | 2011年 | フレデリック・バック展 | 6万4169人 |
第10回 | 2012年 | 館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技 | ? |
逆に、一番少ないのが「日本漫画映画の全貌」(2004年)だったが、内容的にはこれが一番濃かったように思える。特に大型判で255ページにも及ぶパンフレットには圧倒されたが、企画展だけのためにこのようなハイクオリティの歴史書を作るジブリの制作能力は抜群である。もし日本で本格的なアニメミュージアムを構想するならキュレーターはジブリ以外考えられない。
また、ビックリしたのは「ジブリの絵職人 男鹿和雄展」(2007年)。アニメの美術に注目してくれるのはありがたいことだが、29万人以上が訪れたという事実に驚いた。実際に見に行ったら、入り口はもちろん、館内の至るところで行列ができていたが、『となりのトトロ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』の持つ力を実感した次第である。
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