海外では圧倒的、音楽ビジネスに浸透するアニメソングアニメビジネスの今(3/4 ページ)

» 2012年06月12日 08時01分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]

海外の人気はAKB48よりアニメソングの方が上

 ここまでは国内の話だが、海外ではどうなのか。映像コンテンツでも映画やテレビ番組よりアニメが売れているのは確かだが、アニメソングも人気があるのだろうか。

 これに関しては、5月に発表されたJASRACの調査結果を見ると非常に明快だ。JASRACでは毎年、海外からの著作権収入が最も多かった国内楽曲を国際賞として顕彰しているが、受賞するのはいつもアニメソングなのである。

 それだけではない。次表の2011年の海外からの著作権収入データを見れば分かるように、1位から10位まですべてがアニメソング。それもほとんどがアニメのBGM(背景音楽)で、9位の『ぼくたち地球人』だけが主題歌という状況。J-POPなど他ジャンルは1曲もなく、さすがのAKB48も海外ではアニメにまったくかなわないのが現状なのである。

2011年に海外からの著作権収入が多かった国内楽曲(出典:JASRAC)

順位 楽曲 作詞 作曲
1位 ドラえもんBGM 菊池俊輔
2位 NARUTO−ナルト− 疾風伝BGM 高梨康治
3位 クレヨンしんちゃんBGM. 荒川敏行
4位 キャプテン翼BGM 飛澤宏元
5位 ポケットモンスターBGM 宮崎慎二
6位 聖闘士星矢BGM 横山菁児
7位 かいけつゾロリBGM 田中公平
8位 ケロロ軍曹BGM 鈴木さえ子、掛川陽介、本澤尚之
9位 ぼくたち地球人(堀江 美都子) みなもとたかし 菊池俊輔
10位 B-伝説! バトルビーダマンBGM 吹上 隆

 海外からの音楽著作権収入におけるアニメソングの独占状況は、今に始まったことではない。『ぼくたち地球人』が『ドラえもん』のエンディング曲となった1984年に、『キャンデイ・キャンディ』のBGMが第2回JASRAC賞「外国使用」部門でトップを取って以来、ほぼこのランキングを独占するようになっているのだ。

 逆に言うと海外で使われている日本の曲はアニメソングしかないということなので、少しさびしい気もするが、ともかく世界中に日本のアニメが広がっているという良い例証になっている。

 さらに表を詳しく見ると、海外での日本のアニメビジネスの実態が見えてくる。ランクインした曲は、すべてキッズ・ファミリーアニメである。『新世紀エヴァンゲリオン』がなければ、日本であれほど音楽商品が売れた『けいおん!』も入っていない。これはつまり、「海外でもアニメビジネスの主流はキッズ・ファミリーアニメ」ということを示している。

 確かに『新世紀エヴァンゲリオン』も『けいおん!』も、海の向こうの特にアニメファンの間では知られている。しかし、音楽著作権収入に現れてこないということは放映されていないということであり、要するにネット、あるいは海賊版で視聴されているということなのだろう。

 音楽の海外ビジネス、特に著作権に関わるものがほかのエンタテインメント産業よりアドバンテージがあるのは徴収がしっかりしている点である。JASRACと提携している各国の徴収団体がテレビ局を始めとする使用者から、著作権使用料をきっちりと集金してくれるのである。

 「世界で一番取り立てが厳しい」と言われるJASRACほどではないだろうが、私企業が自力でその国に進出するより、はるかに効率的で実効性がある。こうした各国の徴収システムをネットワークできていることが著作権ビジネスの何よりの強みなのである。

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