海外では圧倒的、音楽ビジネスに浸透するアニメソングアニメビジネスの今(4/4 ページ)

» 2012年06月12日 08時01分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]
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驚異のアニメソング『残酷な天使のテーゼ』

 著作物使用料の分配額が多かった作品に与えられるJASRAC賞は、その年の人気の映し鏡なので年間ベストテンに入るのは流行している曲が基本である。従って、年をまたいで上位にランクインすることはレアケースで、ましてや何度もベストテンに入るということは常識的には考えられない。

『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌『残酷な天使のテーゼ』

 ところが過去4回にわたりベストテンにランクインし、今年も入りそうな曲がある。それは『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌『残酷な天使のテーゼ』だ。『残酷な天使のテーゼ』は少なくとも放映当時の1995年には上位に入らなかった(2000年まで上位3曲以外は未発表)。

 しかし放映から12年経った2007年に突如7位にランクイン。これは、明らかに新劇場版第1作『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:序』のヒットによるものだろうが、その勢いは衰えず、翌年も8位につけた。そして2009年に新劇場版第2作『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:破』が公開されると2位へと躍進する。初オンエアから14年後に2位、これだけでも驚異である。

 そして、2010年のJASRAC賞を見て音楽関係者一同肝をつぶしたのが、何と『残酷な天使のテーゼ』が1位になっていたことだ。登場から15年を経た楽曲が1位になることはJASRAC史上初めてのことである。2010年には映画公開もなかったので、余計その印象が焼き付いた。音楽業界の常識では「ありえないこと」なのである。

『残酷な天使のテーゼ』国内著作権使用料収入順位の推移(出典:JASRAC)

 その『残酷な天使のテーゼ』であるが、2011年にはベストテン圏外に落ちた。だが、今年の秋には新劇場版第3作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』が控えている。再びベストテンに返り咲くのは必至であると思われる。

増田弘道(ますだ・ひろみち)

1954年生まれ。法政大学卒業後、音楽を始めとして、出版、アニメなど多岐に渡るコンテンツビジネスを経験。ビデオマーケット取締役、映画専門大学院大学専任教授、日本動画協会データベースワーキング座長。著書に『アニメビジネスがわかる』(NTT出版)、『もっとわかるアニメビジネス』(NTT出版)、『アニメ産業レポート』(編集・共同執筆、2009〜2011年、日本動画協会データーベースワーキング)などがある。

ブログ:「アニメビジネスがわかる


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