スポーツクラブ経営で営業利益率22.6%、高利益率の秘密とは?嶋田淑之の「リーダーは眠らない」(5/6 ページ)

» 2011年10月21日 08時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

躍進を可能にする高収益構造とは?

 ただでさえ商圏人口が少ない上に、場所によっては減少傾向すらある地方都市の郊外に2000〜3000人規模の会員を確保するビジネスモデルで躍進し続ける東祥。月額会費も既存各社よりも15〜20%安く、駐車場は無料。しかも、スタジオ、ジム、プール、風呂には重点的に投資しており、顧客の期待を上回るクオリティのものを提供し続けている。

 既存の大手各社が「市場としての可能性が小さい」と手を出さなかった地域で、それだけの成功を収めている要因は一体何なのだろうか? 沓名さんのお話を総合すると、おおむね次の4つに集約されそうだ。

 第1に、大都市圏の駅前に大型店を出している既存大手と異なり、東祥は地方都市の基幹ロードサイドに出店しているので、土地の賃借料を安く抑えることができる。

 第2に、既存大手は土地だけでなく建物も賃借しており、そこで営業を続ける限り、高い賃借料を払い続けないといけない。それに対して東祥の場合は、建物に関してはほぼ自社物件である。最初の資金調達では借入も必要で苦労はあるが、8年で完済するようにしている。そのため、オープンから10年も経てば減価償却が進み、マシンなどのリース代も低減していて、経常利益率で10〜15%程度の差が出てくる。「中には経常利益率が40%を超える店舗もあります」と沓名さんは言う。

同社店舗のビジネスモデル。これからはプールのない店舗も考えているという(同社IR資料より)

 第3に、15年前にスポーツクラブ事業に新規参入する以前、東祥は1970年代以来、土木・建設を中心に事業を手がけていた。そのため、スポーツクラブに関しても、建設コストを低く抑える具体的なノウハウを持っている点が既存大手にはない強みになっている。新店舗のオープンに際して、他社では設備投資に10億円かかるが、東祥では4億円で済む。

 そして第4に、労働分配率の低さ。東祥では社員200人の平均年齢が25.8歳で、これは業界内上場企業中では最も若い。それに加えて、インストラクターに関しても外部委託はほとんど行なわず、通常、一般学部を卒業した新卒者に社内で教育を施しイントラクターを務めさせているので、労働分配率を13〜15%に抑えられている。

 しかし、既存大手企業では、アスリート出身者を中心とする専門のインストラクターと契約し会員の指導に当たらせているため、外部委託費がどうしても高くなり、労働分配率は東祥の2.5倍ほどになっているようだ。また、社員ではないため、どうしても地方展開が難しくなる。

 以上、要するに、ハード周りを中心に徹底したコスト削減を実現することで高収益体質を構築。その結果として、顧客に対しても彼らの期待を上回るレベルの価値創造ができているということだ。

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