インタビュー
» 2011年07月01日 08時00分 UPDATE

嶋田淑之の「リーダーは眠らない」:地中熱システムで、空調22度でも15%節電を――リチャード・A・ゴードンさん (2/4)

[嶋田淑之,Business Media 誠]

従来のエアコンと地中熱利用ヒートポンプのメリット&デメリット

 両者のメリット&デメリットについては、どう考えればいいのだろうか?

 「エアコンは設置が比較的容易で、価格的にも安価というメリットがありますが、電力使用量が多いですし、稼働時の騒音問題はもとより、夏には熱を屋外に放出することでヒートアイランド現象を起こすなど、地球環境に対して大きな負荷をかけるデメリットがあります。また、外気温がマイナス15度以下の寒冷地では使用できない点もデメリットと言えます。

 それに対して、地中熱利用ヒートポンプシステムは、電力使用量という面ではエアコン使用時よりも40〜60%節減でき、省エネルギー・CO2排出抑制というメリットがあります。また、騒音問題は発生せず、ヒートアイランド現象を引き起こすこともありませんから、そういう意味でも、地球環境に対して負荷をかけないメリットがあります。そして、氷点下15度以下の寒冷地でも利用可能です。しかし、エアコンと比較すると、設備投資に手間と費用がかかるというデメリットが存在します」

 オフィスなどでの電力需要の約50%が空調関係で占められる中、その40〜60%がこのシステム導入で削減されるとなれば、全使用電力の20〜30%が削減されることになる。「ピーク時15%節電は容易に実現できる」と、リチャードさんが断言するのもうなづける。

ah_simada10.jpg 夏の日中(14時頃)の消費電力(全世帯平均、出典:経済産業省)

 リチャードさんがこれまでに担当してきた仕事は、こうした地中熱利用ヒートポンプシステムを用いた空調の節電が主なのだろうか?

 「いいえ、それはちょっと違います。私たちにとって何よりも大切なことは、顧客の施設の省エネルギーに関して“全体最適”を実現することであって、私はそのためのトータルデザインを描く業務に携わっているのです。地中熱利用ヒートポンプシステムは、そうした全体最適実現のための有力な手段という位置付けです」

コスト削減効果も魅力

 それだけ大幅な省エネルギーを実現できるということは、言い換えるならば「大幅なコストダウンが可能」ということになると思うが、リチャードさんの過去の実績の中から効果が顕著だった実例をご紹介いただけないだろうか?

 「ハワイのフォーシーズンズ リゾート マウイ アット ワイレアのケースを挙げましょう。ここでは私が省エネルギーのトータルデザインを行い、地中熱利用ヒートポンプシステムを導入しましたが、ハワイという地域特性を生かして、海水を利用した熱交換を行うようにしました。その結果、同ホテルは年間3億円近いコストダウンを達成しました」

 やや古いデータではあるが、L.Rybach氏の2005年調査によると、このシステムの本場である米国では12キロワット換算地中熱利用ヒートポンプが60万台稼働しており、スウェーデンの32万台がそれに続き、アジアでも中国で5万2600台が稼働している。それに対して、日本は300台に過ぎない。近年では東京スカイツリータウンが導入するといった事例もあるが、普及しているとは言い難い状況だ。

 国の助成制度が未整備である点などが日本を後進国化させた要因と言われているが、節電が産業界における最重要テーマの1つになった今こそ、この分野で日本が欧米や中国にキャッチアップする絶好のチャンスではないだろうか?

ah_simada3.jpg 12キロワット換算地中熱利用ヒートポンプの国別台数(出典:ウェルダン)

室温28〜30度設定の何が問題なのか?

 首都圏・東北地方の企業などが取り組みつつある「ピーク時15%節電」が、オフィスや店舗における顧客や従業員、取引先などの安全面も含め、各種の環境悪化を甘受した“我慢の節電”であることは、先週の記事ですでに述べた通りだ。

 日本建築学会が神奈川県の電話交換手100人を対象に1年間行った調査では、室温が25度から1度上がるごとに作業効率が2%ずつ低下したという結果が出ている。

 「人間が夏でも快適に過ごせる室温は通常22度です。温度が1度上がるごとに仕事の効率が2%ずつ低下するほかにも、湿度の影響が高まることによって1%ずつ、CO2排出量が増えて空気中の濃度が高まることによって0.5%ずつ、つまり温度が1度上がるごとに3.5%ずつ作業効率は下がると学術的に言われています。

 ということは、もし企業などでエアコンの設定温度を28度にしている場合は、22度設定の場合と比較して、作業効率は単純計算で3.5%×(28度−22度)=21%低下することになりますし、30度に設定している場合には28%低下することになります。30度設定となるともはや仕事どころではなく、睡魔に襲われることでしょう。しかし実を言えば、問題はこれだけではないのです」

 作業効率の低下以外に、一体どんな問題があるのか?

 「室温が28〜30度に達すると、オフィスや店舗などの壁の内側に大量のカビが繁殖するという問題があります。その結果、壁の内側がボロボロになって建物が急速に傷んでいくばかりでなく、PCなどの電子機器にもカビが繁殖して耐用年数を縮めてしまいます。

 そして何より深刻な問題は、カビアレルギーの人々に対して重大な身体的ダメージを与えてしまうという点です。現代社会では、こうしたアレルギーを持った人は非常に多いですからね。その影響は甚大です」

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