氷河期でも入社しやすいというけれど……中小企業ってどんなトコロ?「半農半X」 ビジネスコンサルタントと、農業と……(2/5 ページ)

» 2011年01月27日 10時00分 公開
[荒木亨二,Business Media 誠]
誠ブログ

大企業と中小企業は何が異なる?

 マスコミや国は「中小企業なら入りやすいぞ」とアピールする。これはごもっとも、データにも現れている。2011年3月卒業予定の大卒の求人倍率は、従業員数5000人以上の大企業では0.47倍、対して300人未満の企業では4倍を超える(リクルートワークス研究所)。この数字を見る限り、氷河期とはいえ、中小企業なら確かに入りやすいことは事実である。こうしたミスマッチを事例に挙げながら「中小企業へ行け」という論法なのだが、ここが問題。

 1つは「宣伝するマスコミや国の伝え方」。「中小企業なら入りやすいよ!」というシンプルな訴求は分かりやすいが、どこか中小企業をバカにしてはいないだろうか? 「大企業が無理なら……」という大前提に立っており、そこには“大企業優位”という崩れぬスタンスが見え隠れしている。

 識者のこんなコメントもしばしば耳にする。「中小企業には隠れた良い会社もたくさんあるからね」と。「探せばあるよ」という発言は、裏を返せば、中小企業全般のレベルが低いような物言いである。語っている本人が大企業なり高所得なのだから、何とも説得力に乏しい。同じく「中小企業の方が若いうちから大きな仕事を任せてもらえる」という、根拠のない組織論も根強いが、これは社員数が少ないから当然。

 マスコミや国はどうにか中小企業に目を向けさせようとする。でも、学生本人が「大企業に行きたい!」というココロは変えられない。行きたいのだから仕方ない。ガンガン受ければ良いのだ。

 しかし、ふと感じる。大企業と中小企業は必ず“分けて”語られるのだが、そもそも何が違うのか? 従業員数、売り上げといった企業規模をベースに置かないで、純粋に、何が異なるのだろうか? 中小企業は狙い目、優秀な中小企業はたくさんあると聞かされても、学生にはその実態がさっぱり分からない。そこでコンサルタントの目から見た両者の違いを、おおまかに述べてみると……。

細分化された「職種」が大企業の強み

 大企業は従業員数が多い。このため「営業」「経理」「人事」「エンジニア」「広報」「マーケティング」といった、経営に必要な"仕事の種類"が抱負に揃っている。社員はおのおの専門性に特化した業務に携わり、自分のフィールドで最大限努力する。各分野にスペシャリストを配置し、その集合体として、企業能力を最大化しようというのが大企業。非常に合理的なシステムと言える。

 一方の中小企業ではこうはいかない。働く人間の数が少ないため、仮に必要な職種があったとしてもそれを設けることができない。少人数で最低限という発想で陣容を組むため、営業や経理といった売り上げ・経営に直結する人員は必ず置くが、広報やマーケなど“売り上げに直結しない”部署までは手が回らないのが実情。

 急がば回れ……本来は知名度に劣る中小企業こそマーケティングに注力すべなのだが、そうはいかないところが多い。従業員の絶対数が少ないという物理的事情に加え、マーケ業務を担える人材がそもそも社内に存在しないケースが大半なのだ。