ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展2010、現地レポート(9/9 ページ)

» 2010年09月13日 10時12分 公開
[平塚桂,エキサイトイズム]
エキサイトイズム
前のページへ 1|2|3|4|5|6|7|8|9       

 受賞の壇上で石上純也氏は「一昨日はとても悲しかったけど、いまはとても嬉しい」と話し、設営スタッフらへ感謝の意を伝えた。

エキサイトイズム

 そしてパビリオン部門の金獅子賞を受賞したのはバーレーン。初参加での最高賞受賞で、こちらもサプライズ。

エキサイトイズム

 バーレーンによる展示「RECLAIM」。ペルシャ湾に浮かぶ小国は、ここ80年間、湾岸エリアを中心に経済的発展にともない急激な開発が進められてきた。その湾岸に残された小屋を会場内に移設し、開発姿勢を問い直している。いずれの小屋もアラブの伝統的な客間、マジリスとも通じるくつろげる空間となっていて、説得力がある。

エキサイトイズム

 生涯の功績を称える金獅子賞はレム・コールハース氏、特別記念金獅子賞は篠原一男氏が受賞した。

エキサイトイズム レム・コールハース氏

 審査員は委員長にビアトリス・コロミーナ、以下フランチェスコ・ダル・コ、ジョセフ・グリマ、磯崎新、モリッツ・キュング、トリン・T・ミンハの計6名。著名な批評家やキュレーター、編集者などの名がずらり。そして「せんだいメディアテーク」「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」など、数々の名コンペを演出した建築家・磯崎新の名が光る。

 今回の企画展で目立っていたのは、トランスゾーラーと近藤哲雄氏による「Cloudscapes」のように大気自体を直接コントロールする展示だ。例えば一般的な建築物のように、建物によって観客を囲い込むようなあり方に比べ、より直接的に人々の皮膚感覚に訴えかけるだろう。対して金獅子賞を受賞した石上作品のタイトルは「Architecture as air」つまり空気のような建築だ。しかし実際は固体である。視覚的には空気のようであったとしても物理的な作用から逃れることはできずに、内覧会の途中で壊れてしまった。

 ともあれ「People meet in architecture」というテーマとは裏腹に、石上純也の作品で人々が出会うことはできなかった。しかし金獅子賞の受賞という事件に出くわすことになったのだ。

前のページへ 1|2|3|4|5|6|7|8|9       

Copyright (C) 1997-2014 Excite Japan Co.,Ltd. All Rights Reserved.