「一方的な報道による誤解を解きたい」――堀江貴文氏の逮捕後初の会見を(ほぼ)完全収録(3/6 ページ)

» 2009年04月03日 12時20分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

ライブドア事件の3つの争点

堀江 そもそもライブドア事件というのは、私は「違法でない」と考えております。3つの争点があります。「マネーライフ事件」「ファンドでの自社株取引」「架空取引」、この3つの論点があるわけです。

ライブドア事件、3つの争点

 まず、マネーライフ事件ですが、これは2006年1月16日の強制捜査及びその1週間後の私の逮捕容疑になった事件です。マネーライフ事件では、ライブドアファイナンスが実質所有していると言われているファンドが持っていたマネーライフという会社を、バリュークリックジャパンという会社に売った時の(マネーライフの)株価の算定方法に、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法※という方式を採っていたのですが、「この企業価値評価が適正でない」と検察庁から指摘されています。

※DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法……将来発生するキャッシュが、現時点でどのくらいの価値があるのかを算出する手法のこと。

 マネーライフは赤字の会社だったのですが、こういった会社を売る際に将来伸びるということを前提にして、「『今は赤字だけども、将来黒字になってお金をたくさん稼ぐ』ということまで評価して企業を売買する」というのはベンチャー企業の世界では当たり前のことで、米国でも赤字なのに何千億円という価値で取引されている会社は山ほどあります。日本にもたくさんあります。こういったことを「NO」だと(検察庁は判断しました)。

 要は検察庁は、会社の値段というのは「誰が考えてもこの会社は1億円なんだ、という一物一価のようなものがある」と彼らは考えています。しかし会社の評価は当然、買う側の意識によって大きく変わるわけで、「この会社は伸びる」と思えば1億円の会社を2億円で(というように)ライバルより高い値段をビットして買う人がいるように、いろんな評価があってしかるべきです。それを「本来1億円である会社を4億円に評価して買ったというところが違法だ」と言われています。こういったことを言い出したら、「ベンチャー企業は上場もできないし、ベンチャー企業の売買、M&Aもまったく立ち行かなくなるのではないか」と私は危惧しています。

最大の争点

堀江 次は、3つのうち一番有名な容疑、検察庁の一番攻めたいところで、判決で私に有罪判決、しかも実刑判決が下ったところでは一番大事なポイントの「ファンドでの自社(ライブドア)株取引」です。

 そもそも何でこういった(ファンドを通じて自社株を取引する)ことになったかというと、ライブドアがある会社を株式交換で買収しようとした(ことに始まります)。株式交換というのは、「自社株を新規に発行して(当時は5%まで取締役決議だけで発行できた)、マックス5%分のライブドア株を発行して、買収予定会社の株主に対して買収予定会社の株と交換することによって買収を成立させる」という方法なのですが、それをやろうとした時にこの事件の元になるお話が始まりました。

 (株式交換で買収しようとした時に)買収予定会社の株主が、「ライブドア株は価値が低いから受け取りたくない、その代わりに株と同じ価値の現金をくれ」と言ってきたのです。しかし、当時ライブドアは彼らに払う十分なキャッシュがなかったために、株式交換を使おうと思ったわけですので、困った私たちは新しいスキームを作りました。

 「一時的に別の証券会社を経由してSPC※(ファンド)を作って、そこにお金を(ライブドアから)貸し付けて、いったんその(買収予定会社の)株主に(SPCから)現金を払って株式をもらって、その後市場で(新規発行した)ライブドア株を売ることによって、その(SPCへの)貸し付けを戻す」という方法をとりました。永遠にお金がそっち(SPC)に行ってしまうと困るのですが、一時的に貸すお金はありますので。

※SPC……Special Purpose Company。金融機関や事業会社が債権や不動産など保有する資産を本体から切り離し、有価証券を発行して資金を調達するために設立するペーパーカンパニーのこと。

 そういうスキームを作ったわけですが、たまたまその後、株価が高い水準で推移したために、買収先の株主にお金を払っても、ものすごくSPCがもうかったわけです。2社を同じスキームで買収したのですが、30億円以上もうかってしまいました。いや、ごめんなさい。買収したのは2社ではなくて3社です。「なぜ僕が1社忘れていたか」というと、この1社の分、1億数千万円は宮内さんの財布に入っていたからです。

 そこでそのSPCがもうかった分をライブドアの子会社、ライブドアファイナンスに対して配当という形で戻したのですが、「ライブドアの連結決算で利益に計上したことが違法だ」と言われているのです。

 「お金が実際に動いていないのに、お金が動いたようにする」というのが普通の粉飾決算だと思います。しかし、われわれが粉飾決算と言われているものは、37億円のキャッシュが実際に動いています。(検察庁が粉飾決算と主張する)理屈は「自社株を出すことによって、あるいは自社株を売ることによって得た利益は、連結決算上は損益計算書(PL)上の利益ではなく、貸借バランスシート(BS)上の資本剰余金の増加という形で会計書には記載しなければいけない」というものです。

 実際には子会社がお金を出資しているSPC、別の証券会社が業務執行組合員をやっているまったく独立したSPCでそういったことをやっているにもかかわらず、「実質的にはライブドアがライブドア自身で自社株を売ってもうけたのではないか。それはPLではなくBSに付けるべきだ」ということで、有罪だと裁判所は言いました。

 このSPCは脱法目的ではなく、法令を順守しようという目的で作られました。日本の法律では、子会社が親会社の株を持つことが会社法で禁止されています。SPCを運営してもらっている証券会社の担当者はもともとライブドアのグループ会社社員で、「ライブドア株を売買することは、彼のインサイダー取引になってしまうかもしれない」ということで、法律に抵触しないようにわざわざSPCを作ったにもかかわらず、ダミーファンド、粉飾決算をする目的で作ったファンドだと乱暴に認識されているのです。

 つまりこの事件は、「本当は脱法目的でないのに、脱法目的で作られたファンドはその存在を否定される(と解釈されたことによって)、(ライブドア自身が)自社株を実際に売買したのだから、それ(利益)をPLではなくて、BSに付けろ」というだけの話なのです。しかしBSに付けなければいけないというルールはそうなっているのですが、そういうルールになったのも2002年のことで非常に新しい。しかも学会では、「資本説」と「資産説」という2つの学説が並存しています。つまり、「ライブドア株という自社株がどういった性質を持つものなのか」、要は「他社の株と同じような有価証券としての金融商品、つまりお金とかと同じようなもの」なのか、自社株は「自分のところの資本の中の一部なのか」ということです。

 非常に専門的な話なのですが、会計士のように会計を専門的に勉強している人ではないとよく分からないような話を、「当然お前は知っているだろう、だから有罪なんだ」と(検察は主張していると)いうことを言っているのです。みなさん説明してもちょっとよく分からない人たちも多かったと思うのですが、それだけ非常に複雑なことを「当然知っているんだろう」と言われた事件なのです。

 ちょっと難しい話が長くなったのでみんな退屈だと思うのですが、つまり、非常に会計的に難しいところ、どっちが正しいのか分からないようなところでむりやり「お前は正しくないんだ」と言っているのが、ここの2つ目の争点の一番のポイントになるところなのです。「SPCを連結するか、しないか」「SPCが出資元の株を売買した時に出た利益を、BSに付けるかPLに付けるか」という非常にあいまいでよく分からないようなことを無理やり有罪にしようとしたのがこの事件の本質なのです。

 同じような事件で最近最高裁で無罪判決が出た長銀事件(参照リンク)というのがあるのですが、こちらもやはりあいまいな会計制度を争っている事件で、検察はずっと有罪を主張してきて、地裁高裁で有罪判決が出たのですが、最高裁で無罪判決が出ました。この(あいまいな会計制度)部分に関しては、「私も無罪判決が出る」と確信しています。

 最後に(キューズネットやロイヤル信販との架空取引)、こちらの方も架空(取引)と言われていますが、実際には一部作業を除いて(取引の実体はあり)、一部作業は実際にはされていなかったらしいのですが私にそれは報告されていなくて、監査法人からはそこに関しては「作業はされている」とお墨付きをいただいていた形でした。

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