「一方的な報道による誤解を解きたい」――堀江貴文氏の逮捕後初の会見を(ほぼ)完全収録(4/6 ページ)

» 2009年04月03日 12時20分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

仮に有罪だとしても罪が重すぎる

堀江 私は「東京地検に疑われて、実際に会社が上場廃止にされた」という部分に関しての経営的道義的な責任は感じますが、それと「刑事事件として有罪になるのか」はまったくの別物だと思います。刑事事件については、ちゃんと罪刑法定主義で法律に基づいて判断をしてほしいと思います。

 ライブドア事件について私は無罪だと思っていますが、「仮に有罪だとしても非常に不公平だ」と私は考えます。2005年に刑事処罰に代わって課徴金制度(参照リンク)というものが証券取引法(現金融商品取引法)違反について導入されました。ライブドア事件以降、いくつもの粉飾決算の事件が起きましたが、代表的なものをご紹介します。

 まず、日興コーディアル証券の粉飾事件(参照リンク)。ライブドアの約4倍、180億円の利益粉飾を行って5億円の課徴金、そしてライブドアのように上場廃止されず、もちろん経営陣も逮捕されてません。起訴もされていないし、有罪判決ももちろん出ていません。

 次に、IHI(石川島播磨重工業)の粉飾事件(参照リンク)。こちらも200億円の粉飾に対して16億円の課徴金、そして上場廃止されず、経営陣も逮捕されていません。

 そして、ライブドア。50億円の粉飾疑惑と2つの事件より規模が小さいにもかかわらず、上場廃止になり、経営陣が4人逮捕、起訴されて、2人が実刑判決を受けています。私はこれは検察庁の暴走だと思いますし、「こうやって暴走することで市場に大混乱を引き起こす」と分かっていたがために、課徴金制度を2005年から導入しているにも関わらず、その制度を適用せずにわれわれを摘発してしまいました。

 ライブドア事件以前に証券取引法違反単独で実刑になった事例は原則的にはありません。詐欺商法をしていた会社が1件だけ実刑判決を受けて確定している事例(参照リンク)がありますが、基本的には証券取引法違反だけで実刑判決になるということはこれまでありえなかったことです。

人質司法と検察の暴走

堀江 ちょっと長くなってきましたが、これからすごく重要なことをお話します。だからもうちょっとお付き合いいただきたいのですが、『徹底抗戦』に書かれているもう1つの大きなポイントは「人質司法と検察の暴走、これを止めたい」という私の気持ちです。日本では検察官しかこういった刑事事件の起訴というのはできない仕組みになっていて、しかもそれはすべて検察庁の中の密室で行われています。いわば“ブラックボックス”なわけです。

 (検察に)捕まえられて無罪主張をする、いわゆる否認をすると保釈が認められません。つまりずっと閉じ込められたまま外に出られなくなります。私も95日間拘留されましたが、どうして私が拘留されるのかというと、「逃げるかもしれない」「嘘をつくかもしれない」「口裏合わせをするかもしれない」ということで長期拘留されたのです。しかし、僕がどこに逃げても、日本中僕の顔を知らない人はいませんから、逃げられるはずがありません。なのに95日間も拘留されました。

 私は逮捕前、こんなにふっくらしていたのです。逮捕されたらこんなになりました(下写真)。まあ、それくらい辛いということです。

逮捕前(左)、逮捕後(右)

 検察庁は捜査権限、起訴権限を独占していることを利用して、自分で事件を選んで、“費用対効果が一番高い”非常に効果のある事件を捜査、起訴して、長期拘留してむりやり自白をさせるということをやっているのです。「起訴をする、しない」という判断を検察庁ができることで、「お前は起訴しないから、ターゲットした人間が悪いという調書にサインしろ」といった取引もできますし、「お前はずっと無罪を主張しているからずっと出さない」ということもできる。

 つまり、そういった起訴権限を検察官が独占していることによる弊害がものすごく大きい、だから私は日本では導入されていない大陪審、いわゆる起訴陪審(参照リンク、PDF)、「起訴をするかしないか」、つまり「事件にするかしないか」の判断に裁判員が関与できるという透明性の高い開かれた仕組みを作らなければいけないのではないかと思います。「長期拘留をする人質司法をなくすために刑事訴訟法の第89条第4項の規定(参照リンク)を変えなければいけない」と私は強く感じます。

 私がこうやって逮捕、起訴された1つの理由に、「私は拝金主義者だからではないか」「お金が好きだからではないか」といったことをたくさん言われましたが、「それはまったく違う」ということを最後にお話します。私がお金の話をたくさんしたのは、お金というのは色がない、つまり差別を克服するものであるということ、そしてお金は非常に大事なものであると(伝えたかった)、お金は実際に大事なもの、避けて通れないものなので、そういったことを僕は皆さんに知ってもらいたかったのです。

 だからお金の話をたくさんして、それが「堀江はお金が好きなんじゃないか」と悪評が立つ1つの原因になったと思うのですが、私は貯蓄に興味はありません。私は得たお金はすべて自分の夢に向かって投資をしています。私はライブドア株を売って得たお金のほとんどを、宇宙開発に投資しています。そういった夢に向かって新たな投資をするということをこれからやっていきたいと思っています。

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