「一方的な報道による誤解を解きたい」――堀江貴文氏の逮捕後初の会見を(ほぼ)完全収録(6/6 ページ)

» 2009年04月03日 12時20分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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保守的なシステムに対して苦言を呈するのが私に与えられた役割

――今日はいろいろなお話がありましたが、「なぜ、あなたが世間の地位の高い人たちからやり玉に挙げられたのか」について言及されていません。日本の外から見ていると、「やんちゃな若者に日本の老害が逆襲した」というように見えます。あなたが保守派から弾圧的な仕打ちを受けたのは、暗黙の一線を超えてやりすぎたとか、誰かがもっとしきたりに則ってやれと言っていたのを無視していたからなのでしょうか?

堀江 もっと単純な問題だと僕は思っていて、私のことを嫌いな人がたくさんいると思うのです、もしかしたら好きな人もたくさんいるかもしれないですが。嫌いな人たちが一定数いれば、「その人たちが自分たちの味方をしてくれる」という意味で、検察官は捜査がしやすい。まず、これが1つの理由だと思います。

 もう1つ(の理由)はさっきも言った通り、検察官というのは1人1人単独で動くのですが、私のことを捜査していた人も最初は1人だったらしいのです。すでに検察庁を辞めている北島さんという検事さんらしいのですが、彼が1人でやっていたと(いうことです)。つまり北島という検察官が「堀江をやりたい」と(思って)、堀江のネタを集めるために「お前知らねえか」と例えば新聞社の司法記者に聞くと、「ああそれだったら、堀江のネタこんなのありますよ」と情報提供する人がいて、「これはやれそうだな」と思ったらそれを1人で徹底的に調べていくという手法でたぶんやっているんだと思います。

 つまり、1人の検察官の「これをやるんだ」というモチベーションと、それを味方してくれる人が一定数いる、という2つが重要ではないかと僕は思います。「エスタブリッシュメントの人たちから堀江は嫌われてるんじゃないか」といったことは支援する材料にはなるのですが、やはりそれ(捜査するかどうか)は僕は検察官1人1人の個性なんだと思います。

 有名になったら、「検察官に狙われているかもしれない」と注意をするべきです。有名になってお金もうけをしたりすると、「周りの人からねたまれている」と考えるべきだし、「その中で(自分を)快く思わない人が検察官に告げ口をする」ということも当然考えなければいけない。

 ただ私はその(検察の)システムに関しては非常に危険性があると(思います)。第三者のチェックが働かないからです。多くの人たちは逮捕されるだけで、逮捕されて起訴されたらもう社会的生命を絶たれますよ。だから私はさっきも言いましたが、「起訴する、しない」という部分を透明化するべきだと思うし、検察官から捜査権限を取り上げるべきだと(思っています)。

 だって別に検察庁がやらなくても、金融商品取引法違反に関して言えばSESC(証券取引等監視委員会)がありますし、普通の経済事件、詐欺などに関しては警察がいるわけですから、彼らが捜査をすればいい。彼らが捜査したものを起訴するかしないかを第三者的にチェックする機関が検察庁であれば、それで社会がうまくいかないということはないと思うのです。

――古い価値観の犠牲者として現在の日本社会を見たときに、これから若い成功者を輩出していくために、日本はどんな点で変わらないといけないかを3つ挙げるなら何でしょう。

堀江 一番大事だと思うのは、お金に対する教育です。日本では、江戸時代に士農工商というシステムが作られました。「士」というのは侍、最後の「商」というのは商人、われわれのような商売をする人たちなのですが、つまり「一番偉いのは侍で、僕らのような商人というのは一番下の階級である」と200年以上言われてきた。その意識から抜け出ていないんですよ。

 「武士は食わねど高楊枝」という言葉がありますが、「お金もうけをしている奴らは地位が低くて、お金もうけをしていない私たちのような侍というのが偉いんだ」という意識が日本人の中にものすごく植えつけられているのは間違いないと思います。「お金を稼ぐ者は地位が低いんだから、世の中に出て有名になって脚光を浴びてはいけない」という道徳心のようなものが子どものころから植え付けられてきて、それが歴史になってきているというところは僕は大きく変えなければいけないところなのかなと(思います)。

 2つ目に私が思うのは、日本は高齢化社会になってきていて、40歳以上の人口の方が多いんです。だから、新しいもの、チャレンジしていくというようなものに対して、それを抑制する保守的な勢力というものがものすごく強くなってきている。これを変えなければいけない。移民なり、出生率を向上させるためにいろんな補助金を出したりとかやらなければいけないと思うのですが、そういった動きというのは具体的にはまだあまり起きていません。

 3つ目も教育の問題なのですが、「テクノロジーなどで特別なスキルを持っているような人間を、伸び伸びと育てるための教育環境が整っていないのではないか」と思います。日本で教育を受けていない人はよく分からないかもしれませんが、例えば日本の小学校の運動会ではみんな軍隊のような行進をさせられたりします。そういったことを意味もなくさせられるのですが、こういう画一的な教育がされている上に、特別なスキルを持っている人間が周りの平均的な子どもたちからいじめられることが多いんです。いじめられて自分の才能を封印してしまう子がいたり、あるいは自殺してしまうような子がいたり、学校に行かなくなるような子どもたちもいたりする。こういった子どもたちは特殊であるが故にそういう目にあっているわけですが、「彼らを上手く伸ばしてあげられるような教育機関があれば、彼らの特異な才能をもっともっと伸ばして、それを社会に還元することができるのに」と私は思っています。

――米国大統領選挙を通じて「CHANGE」は流行語になりましたが、「自民党を支持するか、民主党を支持するか」程度のことで日本人は抜本的に変わることができるのでしょうか?

堀江 結論から話すと、僕は「できない」と思います。なぜならさっきちょっとお話しましたが、日本の人口というのは40歳以上の方がマジョリティなんです。だから、「CHANGE」したくない層の方が多いはず(です)。だから何かの外圧のようなもの、例えば江戸時代だったら黒船が来襲するみたいなことでもない限り、なかなか変わらないのではないかなと(思います)。この世の中で軍事的な革命が起こるとも思えない、起こしてはならないと思うし、だったら平和的な解決策でこれだけ保守化した日本が新しいことができるかというと(疑問です)。だって、それ(「CHANGE」するかどうか)は選挙で選ばれるわけですから。日本がものすごく貧しくなるとか、ものすごく住みにくくなるとか、そういったことがない限り、みなさんの不満は爆発しない。

――保守的な陣営をあえて刺激するように振るまっていたのですから、それがトラブルを招いたのは必然ではないでしょうか?

堀江 そこに関して「後悔しようかな」と思ったのですが、やはり考えてみて、「私はそういう刺激的なことを言わなければいけない役割なのではないか」と思いました。みんなが保守的で「何も変えたくない」(と思っていたり)、あるいはちょっとおかしいなと思っていても「言うと叩かれるから言いたくない」と思っていたら、誰も言わないから何も変わらないし、良くならない。だから、「それ(あえて旧来のシステムを刺激する振るまいをすること)は私に与えられた運命だし、役割なんだな」と今は確信しています。

外国人記者に人気の堀江氏

 堀江氏は日本外国特派員協会に3回呼ばれていることもあり、外国人記者たちの間での人気は高い。今回も会見前、『徹底抗戦』にサインを求める列ができたため、開始が5分ほど遅れていた。

講演には200人ほどが参加し、テレビカメラも10台ほど並んでいた
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