「一方的な報道による誤解を解きたい」――堀江貴文氏の逮捕後初の会見を(ほぼ)完全収録(5/6 ページ)

» 2009年04月03日 12時20分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

検察官は費用対効果を大事にする

 日本外国特派員協会の会見は質疑応答が中心になるため、講演時間は長くても30分程度におさえられるのが通例だ。しかし、堀江氏は1時間以上にわたって、事件内容や検察のあり方について熱弁した。講演後の質疑応答では、外国人記者たちからさまざまな質問が堀江氏に投げかけられた。

――今、お話を聞いていて、「堀江さんの話し方などが逮捕前と違うな」と感じました。以前のご自分について、「逮捕前に戻れたら、ああすればよかった」というような自分なりの反省などはありますか?

堀江 自分がやってきたことに後悔はないのですが、あの時はああいうやり方しかなかった、今(逮捕前に)戻っても、同じことをやると思います。「丁寧に(なった)」と言われて、すごくありがたいのですが、それは当時は余裕があまりなかった(からです)。ものすごくあせっていたので、いろんなところをはしょっていたのです。

 今は例えば、今回私はスピーチの原稿を作ったのですが、実は初めてのことで、今まで原稿を作ってスピーチをしたことはないし、プレゼンテーション資料を作ったこともありません。時間的な余裕があるので、そういったことをしているのです。「急がば回れ」という言葉がありますが「運が良ければ回らなくてもいい」、そういった部分に賭けていた部分が私はあります。運があまり良くなくて、そうはならなかったのですが。だから(逮捕前に)戻っても、同じことはやると思うのですが、これからは「あまりあせらないようにしよう」と思っています。時間をかけて丁寧にと。このちらし(配布資料)も僕が作っています。

配布資料

――「拘留されていた間、うつ状態になっていた」と聞いたのですが、検察官とのやりとりはどうやってやり過ごしたのですか?

堀江 そこの部分は本にも書いたのですが、私のような経済事件(の被疑者)というのは、すべての人との通信を禁じられて、手紙のやりとりも面会もできません、面会できるのは私の弁護士だけです。「独房に閉じ込められて誰ともしゃべれない」というのは、普通の刑務所では懲罰房のやり方です。私は95日間そういうところに閉じ込められてきました。だから、精神的にはものすごいプレッシャーを受けました。「たぶん、体験したことがない人には分からないかもしれない」と思いますが、想像を絶するプレッシャーで、私は生まれて初めて精神安定剤と睡眠剤を処方されて飲みました。それくらい辛かったです。

 検察官との取り調べは、どちらかというと僕はリラックスできていました。相手は検察官で嫌な人なのですが喋れるので、僕は検察官の取り調べに毎日楽しみに行っていました。(取り調べの内容は)ほとんどが茶飲み話、「それはなぜか」というと彼らも僕が事件についてよく知らないというか、「何が有罪だと思われているか、こいつよく分かってねえな」と向こうも思っていたのか、(事件についての)具体的な話は100分の1くらいしかしていない。あとは99%は茶飲み話で、僕はそれを楽しみにしていました。でも、それ以外の時間は地獄でした。

――ライブドアを経営していた頃にも「●億稼いだ」というような経営についての本を何冊か出されていますよね。人を動かすのに成功していた人が、挑戦に失敗してライブドア社内からも支持を失い、一気に転落してしまったのはなぜですか?

堀江 私はいきなり捕まえられて、「お前、有罪だ」と言われて、頭が非常に混乱してナーバスになったんですね。ナーバスになっていたので、「どこを有罪だと言われていて、裁判所がどういう風に判断するのか」ということもまったく分からなかった。それは「経営が分からなかった」わけではなくて、「何でいちゃもんをつけられてるのか」が分からなかったのです。

 僕は3年かかって、やっとこういう形で本にもまとめられたし、皆さんの前で概要を説明できるようにもなりました。だから私は「会社の経営の内容を知らなかった」のではなくて、「何で私が有罪と言われているのか、どこのどの部分が有罪だと言われているのかが分からなかった」のです。それで(疑われている内容を)実際に見てみたら、ほとんどが「会計の専門的な知識を必要とする部分が有罪だ」と言われていたことが分かりました。これは私の仕事ではなくて会計士あるいは監査法人の仕事で、その部分の専門的な知識は私にはあまりないので、そこまで経営の問題と言われてしまうとなかなか難しい。会計的なことがすべて分かるのなら、私は会計士も監査法人も雇う必要はありません。

――先日、小沢一郎さんの秘書が逮捕されましたが、それについての見解をお聞かせください。

堀江 僕はこの3年間でよく分かったことなのですが、検察官は費用対効果をものすごく大事にする人たちなのです。司法ではなくて、非常に経済的な原則に従って動いています。東京地検特捜部の検事は事務官合わせて150人もいないのかな、検事は50何人とか非常に小さな組織、会社で言えば中小企業(です)。

 だから、(捜査する)事件を選ぶのです。「経済事件だったらライブドアの堀江をやれば最大限の効果が上がる」「小沢さんの秘書をやれば政治的には今、一番注目を浴びる」と(考えたのでしょう)。注目を浴びたら出世できますよね。特にライブドアのような経済事件をやると、多くの会社は恐怖に震えて、検察庁にいたOBたちをたくさんお金を払って雇うことでしょう。

 彼らは「巨悪を摘発する」と言っていますが、巨悪ではなくて、それこそ“しょんべん刑”って言ったらちょっと下品かもしれないですが、そういった類の事件を集中的に捜査して起訴しているようにしか私には見えない。「私や小沢さんの秘書がものすごく悪いことをしているから捕まえる」のではなく、「彼ら(私や小沢さん)が有名だから捕まえるんだ」と僕は思います。つまり、「まったく無名な人が高速道路を100キロオーバーで走っていても捕まえないが、堀江や小沢の秘書みたいなのが1キロオーバーで運転してたら捕まえる」というような例えが簡単に言うと正しいです。

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