現役女子大生のキャバ嬢に学ぶ! プロフェッショナルなトーク術(前編)現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(4/6 ページ)

» 2009年03月03日 07時00分 公開
[森田徹,Business Media 誠]

 また、あまりにもオーソドックスなほめ言葉も効果的ではない。ほめられることに慣れているお客様に、言われ慣れた「カッコいい」という言葉をかけても、何の効果も得られないという。

 「どんなお客様でも、探していけば必ず良いところは1つや2つはある。そうやって見つけた良いところは言われ慣れていないから、通い慣れたお客様でも『そんなこと言われたことないよ』って笑顔になるの」。ほめられ慣れていないことを見つけ出し、心の底からほめるということなのだろう。

 取材当日、筆者はたまたまインターン帰りでスーツを着ていたのだが、彼女と一緒に夕飯を食べて移動するときに、ネクタイについてほめられた。まったく意識していなかったが、よく考えてみると、そのネクタイは某上場企業役員であった祖父にプレゼントされたもの。確かにその日着ていたスーツよりも高い。こういった本人も気付かぬところを探し出して指摘するのが“ほめる”テクニックなのだろう。彼女はこうしたことを無意識に行えるのだから、恐れ入るばかりだ。

テクニックその3:話題への共感と展開

 「やっぱり私が話すより、お客様が話した方がお客様の満足度が高いから」という説明から始まったのは、相づちのテクニックである。会話の始め方を含めて、紹介していく。

 会話を楽しませるコツは、相手に話をさせてしまうことだろう。これは彼女の言葉ではないが、「相手7:自分3」くらいの比率で話をした方が相手の満足度が高いという説もある。もちろん、相手は自分の知っていることしかしゃべれないわけだから、相手に話をさせるには相手の得意な話題にしなければならない。

 しかし初対面の相手では、何を話題にしていいか分からないこともある。だから質問から始まるのだが、ここにもテクニックがあるようだ。「どうしても、質問というと職務質問みたいになっちゃうわけじゃない? だから、質問(詰問)している感があっては絶対にダメ。なので『休みの日はなにしてるんですか?』と聞いて『映画見てたよ』と言えば、『映画ですか!私もメッチャ好きです!』と言った感じで乗っていけばいいのかな。お客様のテンションが高くて、あっちから話を始めたらそれに乗ればいいし」

 こういった場面に使われる「私も!」という共感にも「嘘があってはいけない」という。これには筆者も深く納得した。なぜなら時折女性誌などに書かれている、「相手の話を聞いて『スゴいね!』とほめておけばいい」というテクニックを、筆者は不快に感じるのだ。ここでの“共感”は話題への理解がなければ嘘っぽい雰囲気が出てしまって、相手の気分を害するのである。

 彼女もキャバ嬢として駆け出しのころは、年配の男性が好きそうなスポーツの話題、昔の女優の話題などの情報収集を欠かさなかったらしい。「私の場合は、お客様からも情報収集しているの。あるお客様から聞いた話が、違うテーブルに移ったらそのお客様も同じ話をしていたこともあって、その話はこんな感じじゃないですか? といったこともあった」と振り返る。

 話題について理解があれば、質問をしてその話を掘り下げることができ、自分の知識にもなる。そして相手も、自分の話がウケているという満足感に浸れるのだろう。

テクニックその4:会話に相手の名前を入れる

 筆者は、他人の名前を覚えるのが非常に不得意である。相手の名前を忘れないテクニックとして、会話に相手の名前を入れるのは有名だが、筆者にとっては「言うは易し行うは難し」なのだ。

 それでは彼女はどのようにして、お客様の名前を覚えているのだろうか? 「最初にお客様をどう呼べばいいかを聞いて、その名前で呼んでいけば、自然と相手の名前は覚える」とのこと。彼女なりに努力している面もあるのだろうが、これは才能という面も大きいのかもしれない。

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