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» 2008年11月19日 14時55分 UPDATE

Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」:第13話 プレゼンテーションで注意すべきこととは? (3/4)

[眞木和俊,Business Media 誠]

 その翌週、社内で最も広い会議室でプロジェクト成果報告会が開催された。参加者は最前列に座った小石川社長ら経営陣とジェイネックスの星野と橋下、関連部署の部長、プロジェクトメンバー、など総勢50名近くにも上った。広報部の後藤美咲も社内報の取材のためにカメラ片手に同席している。誠たちのプロジェクトは、将来の成長戦略の一環ということで最後に発表することになっていた。

 思ってた以上に、すごい人数だなあ。これだけの参加者の前で話すとなると、どうしても緊張しちゃうよ。早く終わってほしいのに順番が最後だなんて、ツイてないなあ。

 発表者として前列に座っていた誠が落ち着かない様子であたりを見回すと、最後列にいた美咲と目が合った。美咲は、ちょっと微笑むと右手で小さくガッツポーズをとってエールを送ってくれたようだ。すぐ隣にいた坂口賢二がその様子に気づいて、誠に声をかけてきた。

坂口 おい誠、広報部の可愛い子がお前を応援してくれてるみたいだぞ。こんなときなのに、まったく隅に置けないな。

 いや、そういうわけじゃなくて……。

 坂口にどういうわけなのかを言い訳する間もなく、司会役のI2プロジェクト推進事務局長がマイクを握り、成果報告会の趣旨説明が始まった。やがてひとりずつ各プロジェクトリーダーが登場してそれぞれ発表を行ったが、誠は他のリーダーの発表中も時々手元の原稿に目を落としながら、頭の中で必死に話すポイントのおさらいをしていたので、他人の発表がほとんど耳に入ってこなかった。3つのプロジェクトの報告が終わり、ついに誠の名前が呼ばれた。

推進事務局長 それでは今期I2プロジェクトの最後の報告になります。「新商品開発プロジェクト」の中村リーダー、発表をお願いします。

 それでは、僕たち“イソプロチーム”から新型飲料の開発プロジェクトについて報告いたします。まず新商品を作るにあたり、次の3つの点を押さえることにしました。1番目に「しっかりした安全な商品」、2番目に「原価変動を見据えた原材料調達」、3番目に「新しい販売チャネルへの挑戦」です。会社に貢献できる成果を出す商品は、たくさん売れて儲からなくてはなりません。そしてキックオフの時、小石川社長がおっしゃっていた“将来の柱”となるためには、一時的な“流行飲料”で終わるのではなくロングセラーを目指さなければなりません。そのためにはお客様の声に基づいて商品設計を行うことが最も大切だと考えました。

 このとき目の前に座っている社長の小石川が大きく頷くのが、誠の目に入った。これを見て少し安心した誠は、落ち着いて話を続けることができた。

 今回のプロジェクトでは、パネル分析という方法を使った2段階の消費者調査と実際の試作品を使ったモニター評価を行い、徹底的にお客様の意見を伺いました。またそのときには、必ずチームで新しいアイデアを盛り込んだ仮説を立て、さらにその仮説検証が効率良くできるように意識しながら進めました。このやり方のおかげで、従来よりも定量的で正確な情報を多く集めたにも関わらず、チームメンバーの工数負担を増やさずに済みました。こうした知恵は、そこにお座りの師匠、もといジェイネックスさんたちに教わったものです。

 誠はこういいながら、向かって左端に座る星野を見て軽く頭を下げた。

 さて、新商品開発の具体的な説明に移る前に、ここにお集まりの皆さんに僕たちが今回作った試作品を試飲していただこうと思います。ではチームメンバーの皆さん、よろしくお願いします。

 誠の号令でいっせいに立ち上がったプロジェクトチームのメンバーは、手際よく紙パックの試作品を配り始めた。この演出には、さしもの星野もちょっと驚いた様子で、ストローを口に運んでいた。

 お味のほどはいかがでしょうか? この新商品のコンセプトは「さらっとおいしく効果的に」です。なお皆さんのご感想は、貴重なデータとして後ほどアンケートで伺いますので、ぜひご協力をお願いします。それでは飲みながらでかまいませんので、説明を聞いていただきたいと思います。まず新商品の目標数字は、初年度売り上げ300万ダースで約40億円、2年目には2倍を目指したいと考えています。そのために従来の店頭販売だけではなく、当社では初めてのテレビショッピングでの通信販売も展開します。これには値崩れ防止による収益性向上の狙いも含まれています。この理由は後ほど説明いたします。次に「しっかりした安全な商品」であることをご説明します。事前にご指摘を受けた「大豆イソフラボンの効能と安全性」についてですが……。

 こうして誠は、プロジェクトの報告を無事やり終えた。発表時間を5分間オーバーしてしまったが、自己採点では「100点満点中90点位の出来かな」と、内心ホッとしていた。

 全リーダーの発表が終わり、成果報告会は社長の講評を残すばかりとなった。

小石川 今日の報告会は、それぞれ本当に充実した内容だったと思います。プロジェクトのリーダーとメンバーの皆さんには、会社を代表して感謝します。その上で、ひとつひとつのプロジェクトに対して簡単に講評を述べたいと思います。最初に報告した「営業倉庫の見直しによる物流効率化プロジェクト」ですが……。

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