小石川は、各プロジェクトリーダーに向かって順番に評価内容を説明していった。
小石川 最後の「新商品開発プロジェクト」について、この場に試作品を持ってくるとは意表をつかれましたが、現物を実際に評価できたのは良かったと思います。また直接お客様に風味や安全性を問うことによって、具体案を考えていったことは大変素晴らしかったと思います。そこで、皆さんが提案してくれた新商品の製品化は“条件付き”で承認したいと考えます。
心に余裕ができ、小石川の顔を笑顔で見つめていた誠は、「えっ!?」と驚いて真顔になった。急に誠の表情が変わったのを見て取ったように、小石川はそのまま話を続けた。
小石川 条件と言ったのは、当社で平均6カ月かかっている新商品の販売立ち上げを、半分の3カ月を目標にやってもらいたいのです。これほどの期間短縮にあたっては、各方面への協力依頼や生産ライン確保など、考えただけで頭の痛くなるような困難が待ち受けているでしょう。しかし、今後私たちが生き残っていくためにはもっと経営スピードを上げなくてはなりません。もちろん次は東山部長や中村リーダーだけではなく、さらにCFTを増やして事に当たってもらおうと思います。引き続き星野先生にもご支援をお願いしたいと考えています。
こういうと小石川は静かに自分の席に着いた。一瞬の間があってから、推進事務局長がそそくさと出てきて閉会を宣言した。
推進事務局長 小石川社長、ご講評ありがとうございました。プロジェクトメンバーの皆さん、本当にお疲れ様でした。各チームの健闘をたたえて、今一度拍手をお願いいたします。それぞれのプロジェクト活動は、今後関係部署に実務を引き継いだ時点で完了となりますので、各リーダーは責任を持って引き継ぎ業務をよろしくお願いします。
なおこの後、社員食堂でささやかながら懇親会を行いたいと思いますので、皆さんそちらに移動してください。それでは、これでI2プロジェクト成果報告会を終了いたします。
まさかその場で社長から次のリクエストがくるとは思ってもみなかった誠は、無事プロジェクト成果報告会が終わってホッとすると同時に、ちょっと不安な気持ちを隠せないまま席を立ったのだった。
プロジェクトリーダーといえば、人前でのプレゼンテーション(プレゼン)が付き物です。プレゼンが上手になりたいと思うビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。
ファシリテーションの場合と同じで、プレゼンが上達するためにはそれなりの場数を踏む必要がありますが、最も大切なことはこちらの目的が聞き手にちゃんと伝わるかどうかということです。
本文中にもある通り「相手の聞きたいことを話す」ためには、前もって聞き手の期待や状況が分かっていると対応を考えて臨めます。
しかし、プレゼンする相手が初対面という場合、事前情報は得にくいでしょう。こういうケースでは、プレゼンの最初のアイスブレーク※として、参加者がどんなことが聞きたいのかを聞き出す工夫をしましょう。ストレートに「○○について聞きたいですか?」と挙手を求めてもいいですし、簡単なクイズなどを出して反応を見るのも、うまいやり方です。
ジェネックスパートナーズ取締役会長。ゼネラル・エレクトリック(GE)で、シックスシグマによる全社業務改革運動に、改革リーダーのブラックベルト(専従リーダー)として参加後、経営コンサルタントに転身。
2002年11月、お客様とともに考え、ともに行動するパートナーとしての視点から、お客様の成果実現のために企業変革を支援し、事業価値向上に貢献するプロフェッショナルファーム「ジェネックスパートナーズ」を設立。日本企業再生を目指して、企業変革活動の支援を推進している。著書に『図解コレならわかるシックスシグマ』、『これまでのシックスシグマは忘れなさい』などがあり、中国、韓国、台湾等でも翻訳出版されている。
「誠」世代が“自立する=自ら考え正しく行動できる”ことが、今後の日本経済を支えるといっても過言ではありません。社会に出たビジネスパーソンとして自立するためのきっかけは誰にでも必ずありますから、そのチャンスに果敢にチャレンジしてほしいと思います。
しかしその際、気合と根性だけでは徒手空拳も同然。本連載でご紹介するようなビジネスリーダーとしての心構えと基本動作を身に付けておいたほうが無難でしょう。これらは難しく考えるのではなく、実際に試してみることが大切です。
本連載の主人公・誠は、おっちょこちょいではありますが、好奇心と向上心を持ち合わせたがんばり屋です。誠のように『天は自ら助くるものを助く』の精神でプラス思考で臨んだリーダーこそが、最後にはきっと生き残るのです。
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