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Blu-ray Discクオリティチェック
 「ブルーレイディスク バイオハザード トリロジーBOX」1万2800円

 昨年秋に公開され、世界中でシリーズ最高の収益を上げた本作だが、筆者もシリーズの大ファンでありスクリーンで3回鑑賞している。1回目はマスコミ向けのホール試写。2回目は日比谷スカラ座での4Kデジタルシネマ上映。そして3回目はTOHOシネマズ六本木でのTHXシアター上映だ。この流れで圧倒的な臨場感を得ることができたのはやはりデジタル上映だった。映像の緻密さが、緊張感や臨場感を増幅し、暗いシーンでもディテールが全くつぶれるようなことはない。不思議なもので音響もよりシャープに感じることができた。この後足を運んだTHXシアターでの上映が昔の名画座のように感じるほどその落差は大きく、素直に「スカラ座に行けばよかった」と思えた。それだけにブルーレイ(Blu-ray Disc)での視聴を期待していたのだが、デジタル上映の記憶を彷彿とさせる高画質に充分満足できた。

 圧縮方式はMPEG4/AVC。画面サイズはシネスコサイズ。音声は英語・日本語共にドルビーTrueHDの5.1chサラウンドとなっている。ディスクの視聴は、プレイステーション3とパナソニックのブルーレイレコーダーDMR-BW900からヤマハのAVアンプDSP-AX4600をHDMIで経由し、映像は42インチのプラズマと液晶プロジェクターによる100インチのスクリーン再生で行った。読者には誠に申し訳ないのだが、筆者のシステムは現状まだ次世代音声フォーマットに対応していない。よってドルビーTrueHDはリニアPCMに変換した5.1chでの視聴だったことをご了承願いたい。

 CH-1は第1作を思わせるシーンからスタートする。しかし新撮されたようで、似てはいるが画質が大きくアップしているのが良く分かるはずだ。ミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアリスの着ている赤いドレスの色彩も目に飛び込んでくるようだし、例のレーザー光線のシーンでは鏡張りの通路が気持ち悪いほど立体的に感じられる。適度に引いたサイズでもフォーカスが明確なので、被写体が小さくなっても素直に目を向けることができた。この後、イアン・グレン演じるアイザックス博士が着用している防護服のビニールっぽい質感にも驚きだ。さらにタイトル前、砂漠内にある実験場を囲むアンデッドの群れが登場する場面では数が数えられるほど全てを見渡すことができた。デジタルで数は大幅に増やしているのだろうが、こうしたハッタリ映像はきちんと見えてこそ効果を発揮する。DVDとは相当インパクトが違うはずだ。

(C)2007 Constantin Film International GmbH. All Rights Reserved.

 CH-2は主人公アリスが荒野をバイクで疾走するところから始まる。ロングショットで撮影された荒野の映像がマルケイ監督の初期作「レイザーバック」を思わせ素晴らしい出来。救難信号をキャッチしたアリスはそこを訪ねるのだが、そこにいたのは旅人から物資を奪う強盗団だった。ゾンビ犬の群れの中に放たれたアリスは超人的能力で危機を脱する。この場面も相当暗めなのだが、ゾンビ犬の筋肉むき出しの様子や血糊がとても鮮烈に表現され、監督の狙いが充分再現されている。

 CH-3ではクレア率いるキャラバン隊の様子が描かれる。彼らの存在は言うまでもなく「マッドマックス2」がモチーフとなっている。映画ファンなら説明不要のショットが満載だ。製作・脚本のポール・W・S・アンダーソンも音声解説でそのことに触れている。

バイオハザード写真

 この後、アリスとキャラバン隊が合流し、アリスに異様なまでの執着を見せるアイザックス博士との戦いに終始していく。見せ場としてはCH-8のカラスの襲撃や、CH-11の砂漠化したラスベガスでの一大決戦など飽きることが全くない。エンディングにも一応の結末が迎えられ、大方のファンは納得して見終えることができるのではないか。ラッセル・マルケイ監督はデビュー当初こそ、映像革命の風雲児として注目されたが、「ハイランダー/悪魔の戦士」以降、「ランボー3/怒りのアフガン」の監督を降板し、その後はB級映画専門の扱いになっていた。しかし本作では見事な完全復活ぶりを見せ、昔のファンをも驚かせてくれたのは本当にうれしい。

 ブルーレイの特典は音声解説、「ラクーンシティの果て:『バイオハザードIII』の検証」と題したメイキング、未公開シーン、ゲーム版「5」の予告編など盛りだくさん。ブルーレイならではの機能としてはブルーウィザードが大注目。未公開シーンやメイキングを選択して本編に挿入して見ることができる。またピクチャー・イン・ピクチャー(P in P)も可能になった。熱心なAVファンなら「M:i:III」でHD DVDのみP in Pが可能だったことを記憶しているだろうが、ブルーレイでも今後積極的に採用されるはずだ。

 ミラ・ジョヴォヴィッチの勇姿も本作が見納めとなってしまうのはとても残念だが、有終の美を飾るにふさわしい出来で、ソフトとしても充分魅力あるものになってくれたのは高く評価したいところだ。次世代規格争いが一段落したので、レコーダーを購入した人も多いだろうが、ソフトは何を購入しようか迷っている人も多いだろう。そんな人に本作は自信を持ってオススメできる優良盤だ。ちなみに本商品は「I」と「II」を梱包したBOX仕様でのリリースだが、「I」は初ブルーレイ化であり、「II」もエクステンデッド版での本編収録なので、「II」の旧版を所有していても購入価値は高いことを付け加えておきたい。

取材・文/飯塚克味