コックピットのようなエスプレッソマシンの前に立ち、きびきびとした動きで香り高いエスプレッソをサーブするバリスタ(barista)。もともとの語源はイタリア語で「バール(bar)でサービスをする人(〜ista)」である。イタリアではバールは、昼はエスプレッソ、夜はアルコールをメインに出し、1日中人々が集い語らう、生活に密着した社交の場だ。そんな“コーヒー職人”バリスタという職業は、カフェブームが定着するに伴い、人気の職業として注目を浴びている。 |
2006年12月に日本橋にオープンした「espressamente illy(エスプレッサメンテ イリー)」は、世界中で毎日600万杯が愛飲されているコーヒーのトップブランド「illy」が、日本に成熟した真のイタリアンバール文化を提供するべく創造したフラッグシップ店。NECとのコラボレーションによって多角的な社交の場を実現している。同店の総支配人である中川直也さんは、イタリアエスプレッソ協会の公認バリスタだ。 「エスプレッソの魅力は、上質のワインやチョコレートに通じる官能性です。本当のエスプレッソは香りや舌触りに心地よい余韻が残ります。現在、大手のチェーン店により、日常でも気軽にエスプレッソを飲まれる機会が増えたと思いますが、当店で本物の美味しさを味わっていただければうれしいですね」 中川さんのバリスタ歴は約10年。日本にまだカフェ文化が根付いていない頃から、スタイリッシュで上質なイタリアンバールの魅力に惹きつけられたとあって、ルックスもどことなく和製イタリア男性風味を醸し出している。 |
「当店にいらっしゃるお客様は女性の方が圧倒的に多いですが、豆を購入なさる方はこだわりをお持ちの40〜50代の男性が多いです。ご自宅で美味しくお飲みいただくには、何よりも豆の管理が大切です。豆は湿気を嫌います。できる限り豆が空気に触れないように密封いただき、冷蔵庫などの冷暗所に保管なさることをおすすめいたします。また、缶の内側が結露しないよう、冷蔵庫から缶を出したらすぐに開けずに、少し経ってから開けるようになさってください」 イリーにはバリスタ大学もあるそうで、トレーナーでもある中川さんに、自宅のエスプレッソマシンで美味しく淹れるコツを伝授していただいた。 |
@ エスプレッソホルダーに挽いた豆(約7g)を均一に入れて強くプレスする。 A お湯の温度は90度ほどが、甘味と香りが引き立つ B 砂糖を入れてもすぐに沈まないほどなめらかでコシのある泡と、ごく薄い縞模様(タイガースキン)が表面に浮き立つのが、美味しく淹れられたサイン C さあ召し上がれ! |
最後に、砂糖はたっぷりと入れることが、エスプレッソを美味しく味わうポイントと中川さん。「本来、エスプレッソはデザートのように楽しむものです。砂糖を入れて一息に飲むことで、官能的な余韻を楽しむことができます。甘みのないチョコレートは美味しくないですよね? エスプレッソも同じです」 「砂糖を入れないエスプレッソは、恋を知らない人生と同じこと!」と言い切る中川さん。官能的なエスプレッソの余韻が、男の色気もアップさせるのだ。 |
http://www.espressamenteilly.jp/ 東京都中央区日本橋2-5-13 富士ビルディング1F |
取材・文/似鳥陽子