いま掃除しかできないんだったら、掃除をやるしかない――創造的選択インタビュー全文公開(前編)達人のクリエイティブ・チョイス(6/6 ページ)

» 2009年07月22日 21時00分 公開
[鷹木創,Business Media 誠]
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いま掃除しかできないんだったら、掃除をやるしかない

堀内 ということは、どういう人を採用するかに結構依存することになっちゃうのかな。

柳澤 あるいはさっきの話じゃないでしょうか。思い込みが強いとか、突き詰めていくとか。秀でたクリエイターには2パターンあると思うんです。すごい経験を積んでいて、年を取れば取るほどいいものを作る人と、もうなんか全然経験ないんだけど10代から天才的なものを作る人。多分、若い人は自分を突き詰めて考えているんじゃないんですか。だからオリジナリティのあるものが10代でも出てくる。

 それ以外の人はみんなから経験を得たり、自分が見たものを経験則としてこれがあるないっていうのを徐々にやっていくから、経験が増えれば増えるほど新しいものがなんとなく消去法で出てくる感じ。年取ると。そういう人もいると思います。

細谷 直感って、真っ白なところから出てくるような気がするんですね。その真っ白の出し方が柳澤さんが言ったみたいに、若い人の真っ白の出し方がまさに「何もないから真っ白だ」というのと、なんか色々と経験して経験して、「真っ白な境地にたどり着く」人っていうのが多分いるんじゃないかな。

 だから直感ってただすぐ頭に出てくる、最初に出てきたアイデアっていうのだと、前に経験した、昨日やった事がそのまま出てくることは多分真っ白じゃない。それをずっと突き詰めて突き詰めて、真っ白な状態に1回してから出てくるっていうのが直感なんじゃないかなという。それがつまり経験を積んだ人の、なんか職人系の人の真っ白の出し方なんじゃないですかね。

堀内 経験者の真っ白というのは、要するに自分が暗黙のうちに持っている考え方の枠みたいなものを意図的に外していくような作業なんですかね?

細谷 外すとか外さないとかいうよりも、どっかの引き出しから出してくるという行為よりも、どこかから出てきましたという、それだけという気がするんですけどね。

堀内 個人からすると、それだけ突き詰められるテーマを見つけるということが難しいですよね。

柳澤 最近ウチで流行っているのは、やりたいことはやるなって言ってます。できることやっていれば自然とそれが自分の選択肢になる。イチローもいいますけど、天才であればあるほど「できることをやってきただけです」というじゃないですか。「やりたいことをやった」じゃなくて。やりたいことはだいたいずれているか、間違っているんですよね。そうじゃなくて、できることをやっていくとそれが自分の道になっていくとおもうんです。

堀内 いま上手にできていることを突き詰めていくと、後から自然とついてくるみたいな。ああ、なるほどね。

柳澤 いま掃除しかできないんだったら、掃除をやるしかないんですよ(笑)

堀内 研修とかスクールとかで論理的思考を教えていて、方法論は学べばできるんですよね。けど、最後の最後は「そこまでしつこく考える必要があるのか」みたいな、根気とかいう話になっちゃうんですよ。そこまで考え抜く必要性とかエネルギーがもうない。すると最後は主観というか、さっきのどこまで突き詰めたいというか個人の思いの話になってきてしまって、そこはすでに論理的じゃないんですけど、でもそういう思いがないと、論理的にも考えられない。

柳澤 だれもが過去にクリエイティブ・チョイスを1回ぐらいやっているんでしょうか? それを思い出して今後に生かそうみたいな。誰もがやっていますか?

堀内 やっているという立場なんですけどね。

柳澤 一般的にやりがちなのはいつなんでしょう?

堀内 やっぱり大きなイベントでしょうね。転職とか。就職、進学、結婚とか。あとはやっぱり不幸。自主的でない選択を迫られるケースってあるじゃないですか、突然病気になるとか、肉親に不幸があったとか。それはなんかもう起きてしまってからどうするかという、この本で言う「書き直し」をしなきゃならないという。でも自分ではどうしようもない、降ってきてしまったので。

 でも少し後からみて、あの時できる最善だったと、自分の選択をある種正当化する、ということをわれわれやっていると思います。そういうことの繰り返しで、その選択のきっかけとか、選択の結果がなんであれ、自分なりに筋を通して、その選択の上に立って、次のステップを踏もう、というのは、結構誰もがやっていること。この本、もう数十人のフィードバックを得ていますが、6割以上納得というか「自分もやっているなあ」という感じでした。

細谷 営業マンって日々それですよね。たぶん。自分の、自社の商品にお客様が言っていることがラインアップになかった時は全部クリエイティブ・チョイス。そこでないというのではなく、でも「どうしたらいいんですか」と。それでしたらこちらがありますよと。実はそちらがよかったり。お客様は他社の製品を見てからこれが欲しいと言っているんだけど、「それはないですけど、うちにはもっといい製品があるんだよ」と。あるいは高いと言われてからがクリエイティブ・チョイスであって。まけますというと2択の世界であって、「まけます」じゃなくて「これだったらこの値段払いますよね」ってもっていく。優秀な営業マンはクリエイティブ・チョイスの固まり。目的に戻って「何したいんですか?」とたずねられること。

堀内 お客さんの目的をいかに手持ちの手段の組合わせで実現するかみたいなことをやらざる得ないんですよね。

 中編へ続く。

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