細谷 本を読ませてもらって、気づきがありました。最初に問題があるじゃないですか。あの問題(※下記の問題)自体は、たしかポール・スローンの本かなんかにも出てましたよね。『イノベーティブシンキング』かなんかだと思いますが。
まず、次のクイズを試してみてください。これは倫理性の高さを問うために、企業の面接で実際に問われたものだそうです。
あなたは暴風雨の中、車を運転しています。バスの停留所に差し掛かったとき、3人の人がバスを待っているのが見えました。
- 危篤らしい老婦人
- かつてあなたの命を救ってくれた旧友
- あなたが夢にまで見た完璧なパートナー
あなたの車にはあと1人しか乗せることができません。だれを乗せますか?
『クリエイティブ・チョイス』まえがき
堀内 あ、本当に!?
細谷 ちょっと設定は違うんですけど、同じような問題が出てて、あの問題自体は知ってたんですよ。気づきがあったというのは、堀内さんはそれを実際の生活に本当につなげたっていうところ。ああいうのって、ただのパズル問題に思われがちなところがあって、パズル問題はパズル問題、実際問題は実際問題って、それでおしまいにされがちじゃないですか。でも、それがちゃんとつながっていて、パズルの世界の問題は実生活ではこういう意味だよとつなげてくれたっていうのが、気づきでしたね。
ロジカルな話だからどうこうって、本の世界で皆さん勉強してきたと思います。本の世界は本の世界で分かったけど、じゃあそれ実生活でどうすんの、っていう、多分そこが難しいっていうところで、そこが書かれているのがすごくいいなと思いましたね。
堀内 ありがとうございます。確かに流行ってますよね。ラテラルシンキングとか発想法とか。
細谷 それを単なる本の世界とかパズルの世界とか、そういう理屈だけの世界じゃなくて、ちゃんと実生活につなげるというのが、実は一番難しいのかなと思います。そこが、私がこの本を読んで一番気づかされたところかな。うん、いろんなことをつなげてみようかなと。
誠 Biz.ID 細かいところでいうと、どのあたりの文章にそれを感じました?
細谷 もう、まえがきを見た瞬間ですよ。問題があって、次に堀内さんの実際のチョイスの話が入って、あっそうか、と思って。そこの現実の世界、今までパズル問題でしか考えてなかったことが、あっそうかと。だからもう最初の3ページぐらいですかね。
堀内 なんかああいう、ちょっとトンチっぽいようなクイズとか、こう、いわゆる発想力みたいな話ってありますよね。ああいうのって、例えば、細谷さんが書いたような地頭力のフレームワークでいうと何が求められるというか、どんな力が要求されるんですか。
細谷 面白い話なんですけど、例えば私の本で言ってるフェルミ推定という話も同じなんですね。あれも単に電柱の本数を数えましょうという話と、われわれが普段やっている仕事の話が全部一緒だというのがあの本のキーメッセージなんですね、ある意味。そいう意味も含めてフェルミ推定しかり、全部そうなのかなと。その一つのバリエーションとしてさっきの話が出てきたみたいなところ。
堀内 あの本の中で、守りの論理的思考力、攻めの直感というのが色づけされてましたよね。攻めの直感というのはどういう意味だったんでしたっけ? 面白いなと思ったんですけど。
細谷 ロジカルシンキングというのが今流行ってますけど、ロジカルであることからは多分何も生まれないんですよね。ロジカルって結局、当り前のことを当り前に説明するっていうだけなんで。それが難しいとは思いますけど。だからロジカルであることにあまりにこだわるというのは、あまり良くないのかなと。
というか、ロジカルなことばかり一生懸命勉強しても、それが目的になっても結局なんら生まない。ただし、そこは守りだと。なんか新しいものをやるのなら、そこに何かプラスアルファのものをくっつけなきゃいけない。そこがまさに、クリエイティブ・チョイスの中に出てくる。だから論理と直感をペアで考えるっていうのは非常に賛同しますよ。
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