ロンドンでクチコミを使ってG-SHOCKブームを仕掛ける男――ティム・グールドさんG-SHOCK 30TH INTERVIEW(番外編)(3/4 ページ)

» 2013年05月27日 16時11分 公開
[吉村哲樹,Business Media 誠]

バイラルマーケティングによるG-SHOCKブランドの認知

──影響力が大きい人たちに真っ先に訴求することで、そこからの口コミ効果を狙っているわけですね。

グールドさん: その通りです。直営店で行うイベントに影響力が大きい人々を招待すれば、メディアの記事や個人のブログ、SNSへの書き込みなどで広くG-SHOCKのブランドイメージが伝播していきます。

 また直営店以外の出店も、ハロッズやセルフリッジ、ハーヴェイ・ニコルズといった、ハイクラスな高級デパートに的を絞っています。こうした高級店は、やはり一般消費者の購買行動に与える影響が大きいですからね。

 現在では、こうしたハイクラスな領域に対してマーケティングリソースを集中的に投下していて、逆にマス広告はほとんど打っていません。その方が、費用対効果が高いと考えているからです。

──ハロッズといえば、英国でも格式の高い老舗デパートというイメージがあります。G-SHOCKのイメージとはずいぶん違うように思いますが……

グールドさん: 確かに(笑) ハロッズには期間限定で、G-SHOCKのポップアップストアを出店しました。そこではお客さんに自由に写真を撮ってもらって、そのままFacebookやツイッターに投稿できるというキャンペーンを仕掛けたところ、これが非常に好評を博しました。SNSはブランドイメージを効果的に広められると同時に、消費者の生の声を得られるという意味で、マーケティングのための重要なツールとして位置付けています。

G-SHOCKバスで野外フェスに乗りつける

──なるほど。ちなみに店舗以外では、どのような取り組みを行われているのでしょうか。

グールドさん: 主に音楽とファッションの分野で、影響力のあるアーティストやデザイナーにさまざまな働き掛けを行っています。一例を挙げるとすれば、「G-SHOCKバス」が面白いかもしれません。

 ひと目でG-SHOCKバスだと分かるように黒くペイントした古い2階建てバスを、野外音楽フェスティバルのVIPエリアに乗り付けるのです。ステージが終わったアーティストたちが、このバスの中でドリンクを飲んでくつろいでいる様子が写真などに撮られるわけですが、みんなG-SHOCKを着けている。影響力のあるアーティストとG-SHOCKの結び付きがアピールできるわけです。

 ちなみに、このG-SHOCKバスのホイールの中心部には、本物のG-SHOCKを埋め込んであります。「このまま走ってもG-SHOCKは壊れない、まさにタフネスの証明」というわけです(笑)

──これは非常に興味深い取り組みですね! 一方のファッション分野では、どんなことを行われているのですか?

Maharishi ロンドンを拠点とするファッションブランド「Maharishi」とのコラボモデル

グールドさん: 例えば、若手デザイナーとコラボして、オリジナルデザインのG-SHOCKを作っています。こうして出来上がったG-SHOCKは市販されることはありませんが、ショップに展示することで感度の高いインフルエンサーに訴求できるという効果があるのです。

 また2012年には、英国のファッションブランド「Maharishi」とのコラボレーションモデルも発売しました。これは、英カシオとしては初のコラボレーションプロジェクトだったのですが、大変好評を博しました。

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