では、Sモードはどうだろうか。こちらは徹底的にパワーバンドを外さないシフトスケジュールが組まれており、「とことんスポーツ」なセッティングだ。特にワインディングでのスポーツ走行時には、このSモードはかなり楽しい。加速時にはかなりの回転数まで引っ張ってくれるし、コーナー手前のブレーキングでは「フォン、フォン」と、まるで熟練ドライバーのヒール&トゥのような見事なシフトダウンを決めてくれる。エンジン音だけを聞けば、まるでMT車のそれだ。
ちなみに、今回の試乗で最も印象深かったのが、このワインディングでの走りだ。コーナリング時の挙動は、どこまで行っても安定している。わずかな量のロールを保ちながら、唐突な挙動を一切見せることなく軽快にコーナーを抜けていく。安定しているからといってステアリングの反応が鈍いわけではなく、むしろ切れば切っただけ、即座に反応して「グイッ」と車体の向きを変えてくれる。ベーシックグレードですらこうなのだから、スポーツサスペンションや18インチタイヤを装備した上位グレードなら(試乗車は17インチを装着)、さらにファンな走りが満喫できるに違いない。
そしてもう1つ印象に残ったのが、乗り心地だ。これだけのコーナリング性能を引き出すためには、通常はある程度乗り心地を犠牲にしてでも足回りを固めるところだろうが、新型Aクラスの乗り心地は決して悪くないのだ。もちろん、乗り心地最優先のサルーンモデルと比べれば、確かに乗り心地は硬めで、荒れた路面ではそれなりにハーシュネスが伝わってくる。しかし決して不快というほどのものではなく、振動の角が十分に取れていると感じる。ただしこの乗り心地は、ひょっとしたら上位グレードのスポーティモデルではその限りではないのかもしれない。
その一方で、長時間ドライブの後では、ブレーキペダルの操作で足首にかなり疲れが出てしまった。というのは、試乗車のブレーキペダルのタッチがかなり硬くて、かつ効きが敏感な、いわゆる「カックンブレーキ」。ペダル操作にかなり気を遣わざるを得なかったのだ。もっともこのペダルタッチは、個体差によるものなのかもしれない。
もう1つ気になったのが、ブレーキペダルとアクセルペダルの前後オフセット。ブレーキペダルの位置が、アクセルペダルよりかなり手前に配置されているように思う。ましてや、先に述べたように、アクセルペダルを比較的深く踏み込んでいく場面が多かったため、アクセルからブレーキに踏み変える動作がどうしても大きくなってしまう。これは、ストップ&ゴーを頻繁に繰り返す長時間ドライブでは、人によっては筆者のように疲れの原因になるかもしれない。
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