デザイナーに聞く「なぜ、新EDIFICEはすっきりデザインになったのか?」(2/3 ページ)

» 2012年05月30日 15時15分 公開
[吉村哲樹,Business Media 誠]

まずデザイン、その後に設計

カシオ計算機 デザインセンター 時計デザイン部 第五デザイン室 室長 川島一世氏

――なるほど。初めて見たときは、やはりフェイスデザインが非常にシンプルになった点が最も印象に残りました。特に四角形のインダイヤルが、全体のスッキリした印象を効果的に演出しているように感じるのですが、このデザインはどのように考案されたものでしょうか。

樋口 Smart Access搭載モデルでは、6時側のインダイヤルで現在の動作モードを表示するのですが、従来の円形ダイヤルでは動作モード以外にもさまざまな表示機能が詰め込まれていたため、ぱっと見ただけではどのインダイヤルの針が何を指し示しているのか、直感的に分かりにくい面がありました。そこでEQW-A1100では、「ローカル時刻表示」「ワールドタイム」「ストップウォッチ」「アラーム」という4つの動作モードを、四角形のインダイヤルの各四辺に配置することで、現在どの動作モードに設定されているのかが、直感的に把握しやすくすることを狙っています。

 このデザインを具現化するためには、表面のデザインだけでなく中のムーブメントも、インダイヤルの機能をモード表示に限定する仕様に沿って設計する必要があります。従って、開発チームの設計者の方々と、仕様設計の段階から密に連携を取りながらデザインを進めていきました。

――まずは「四角形のインダイヤル」というデザインがあって、その後にそれに沿ったモジュールが開発されたということですね。

カシオ 四角形のインダイヤルでモード表示を分かりやすくした

川島 はい。単に出来上がったものにデザインをかぶせるのではなく、「何をやりそうな時計か」ということがデザインで表現できるよう心がけています。四角いインダイヤルなら、「お、この時計はクロノグラフに見えるけど、ほかとはちょっと違うぞ」という関心を持ってもらえますよね。まずはそういったデザインありきで、その次にそれを実現するためのエンジンやモジュールを開発するという順番で時計を作るわけです。

ハンディストップウォッチのようなシンプルで高い視認性を目指した

カシオ カシオ計算機 デザインセンター 時計デザイン部 樋口貴康氏

――確かにおっしゃる通り、動作モードは確認しやすくなっていますね。また、インダイヤル以外のスペースも、余分な表示やギミックが排されて視認性が良くなっているように感じます。

樋口 ストップウオッチとしての機能性を重視した結果、このようなデザインに至りました。Smart Accessの動作モードがストップウオッチになっている時には、時針と分針がぐるぐる回ってタイムを計るわけですが、このときに針が文字盤上の文字をまたぐと視認性が落ちてしまいます。そのため、文字盤上の表記は極力なくして、その外側にストップウオッチの目盛表示を配置しました。究極的には、ハンディストップウオッチのように目盛と針だけが目に入ってくるようなデザインを目指しました。

――シンプルなデザインを実現するために、以前のモデルからあえて機能を削るということはしましたか?

樋口 機能の数は減らしていません。その代わり、これまではインダイヤルに配置されていた「バッテリー残量」や「電波受信状態」を示す表示を、9時位置に配置したゲージ型のインダイヤルに移しました。つまり、一番見せたい情報と、それ以外の情報の間で優先順位を設定し、表示方法を整理したのです。

川島 もともとEDIFICEが持っている機能の数は、それほど極端に多いわけではありません。カシオの時計はデジタル技術がベースになっていますから、メモリ内に膨大な量のデータや機能を詰め込むことができます。でも、デジタル時計ならいざ知らず、アナログ時計の場合には機能をたくさん詰め込むよりも、より使いやすい機能を実現するためにいかに技術を活用するか、という方針で時計作りに取り組んでいます。

――ちなみにモータースポーツウオッチでもあるEDIFICEには、ラップタイムを計測する機能も付いていますね。

樋口 Smart Accessのストップウオッチ機能と連動して、直近10本分のラップタイムを記憶して、それを電子リューズの操作で呼び出して針で表示させることができます。前モデルのEQW-A1000では5本分しか記憶できなかったのですが、EQW-A1100ではこれが10本分に増えています。

川島 直近10本分のラップタイムとは別に、これまで計測したタイムの中で最も速かったもの、つまり「ファステストラップ」のタイムを記憶しておき、後で呼び出すこともできます。

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