デザイナーに聞く「なぜ、新EDIFICEはすっきりデザインになったのか?」(1/3 ページ)

» 2012年05月30日 15時15分 公開
[吉村哲樹,Business Media 誠]
カシオ EDIFICE「EQW-A1100」

 カシオ計算機(以下、カシオ)は、「EDIFICE」(エディフィス)の新モデル「EQW-A1100」を5月31日に発売する。EDIFICEはカシオのウォッチブランドの中でも、エレクトロニクス技術を生かした独自のクロノグラフ機能を前面に打ち出したモデルを取り揃えるブランドだ。また、ストップウオッチ機能やラップタイム計測機能など、モータースポーツ向けの機能も多く搭載し、モータースポーツファンに強くアピールするブランドでもある。

 これまでEDIFICEはいずれのモデルも、エレクトロニクス技術ならではのインダイヤルのギミック的な動きや多層構造の文字盤、またレーシングカーの計器類を想起させるダイヤルデザインなど、遊び心満載のデザインコンセプトで知られていた。しかし、今回のEQW-A1100では一転。四角形のインダイヤル2つを縦に配置する、非常にスッキリしたデザインに様変わりした。これまでのEDIFICEのデザインを見慣れた方の中には、「これが果たしてEDIFICEなのか?」と思う人もいるかもしれない。

 このデザインコンセプトの転換は、一体何を意図したものなのだろうか。実際にEQW-A1100のデザインを担当したカシオ計算機 デザインセンター 時計デザイン部 樋口貴康氏と、同デザインセンター 時計デザイン部 第五デザイン室 室長の川島一世氏に話を聞いた(以下、敬称略)。

「ギミック満載」から「すっきり、スマート」に路線変更したEDIFICE

――今回新たに、EDIFICEブランドの最上位モデルとして発売されるEQW-A1100ですが、2012年のバーゼルワールドで初めて発表された際(参照記事)、「ずいぶんデザインコンセプトが変わったなあ」と感じました。

カシオ 左が前モデルの「EQW-A1000」、右が新モデルの「EQW-A1100」。デザインコンセプトが大きく変わった

川島 EDIFICEは「アドバンスダイナミズム」というブランドコンセプトを掲げ、カシオならではの特色を打ち出したクロノグラフの実現に挑戦してきました。スイスの時計メーカーが作るクロノグラフは機械式のムーブメントを使った伝統的なモデルが多いのですが、それに対してわれわれはエレクトロニクス技術を生かした躍動感のあるダイナミックな動きや、これまでにない機能や使い勝手を備えたクロノグラフの開発に注力してきました。

 「エレクトロニクス技術を生かした独自の時計作り」というコンセプトは、EDIFICE以外のG-SHOCKやOCEANUS、PROTREKも含めた、カシオの時計すべてに共通するコンセプトですが、特にここ数年間は電子式リューズでアナログウオッチに新たな機能性と操作性をもたらす「Smart Access」という新テクノロジーの開発に注力してきました。EDIFICEブランドでは、すでに2011年8月に発売された「EQW-A1000」で初めてSmart Accessが搭載されていて(参照記事)、EQW-A1100はその第2弾になります。

 2012年のバーゼルワールドでは、このSmart AccessがEDIFICE、G-SHOCK、OCEANUS、PROTREKとすべてのブランドに搭載されたことをアピールすると同時に(参照記事)、次の段階として「Smart Access to Smart Functions」というコンセプトを新たに打ち出しました。つまり、Smart Accessの先進テクノロジーを、「分かりやすい操作性」「高い視認性」「快適な装着性」といったユーザビリティを向上して提供するという方向に、各モデルとも注力していくことになったのです。

――そういった背景があった上で、EQW-A1100のデザインは複雑なギミックを演出する路線から、シンプルで視認性の高い方向に転換したわけですね。

川島 その通りです。フェイスデザインだけでなく、EQW-A1100は装着性を高めるためにケースの厚みも従来のモデルと比べ10%以上薄くしました。また、ベルトのコマの構造やサイズも変更して、より手首にフィットしやすくなっています。

カシオ 新EDIFICE「EQW-A1100」のデザインを担当した川島氏(左)と樋口氏(右)
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.