「また騙(だま)されてしまった。正直者がバカをみる世の中っておかしい!」――このように感じたことがある人も多いのではないだろうか。
悪い奴が幅を利かせている社会は、困ったものだ。人を裏切って、不誠実で、暴力を振るう人がトクばかりしているのなら、こうした勢力が増えているはず。しかし、実際は違う。人を裏切らず、誠実で、暴力を振るわない人が、大多数を占めている。この、一見矛盾するような状態はどうして存在するのだろうか。
ひょっとしたら、悪い奴はそれほどトクをしていなくて、いい人のほうがトクをしているのかもしれない。知らず知らずのうちに、人は“いい人”を演じることで、いろいろな恩恵を受けているのかもしれない。そんな疑問がわいてきたので、動物行動研究家の竹内久美子さんに話をうかがった。
なぜ? 動物に詳しい人なの? と思われたかもしれないが、動物の「生き方」と人間の「生き方」には何らかの共通点があって、そこから学べることも多いからだ。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。3日連続でお送りする。
→中編、本記事
1956年、名古屋生まれ。1979年、京都大学理学部卒業後、同大院博士課程を経て著述業に。専攻は動物行動学。理学修士。1992年、『そんなバカな! 遺伝子と神について』(文藝春秋)で、講談社出版文化賞科学出版賞受賞。その他の著書に、『女は男の指を見る』『本当は怖い動物の子育て』(いずれも新潮新書)、『指からわかる男の能力と病』(講談社+α新書)などがある。近著は『騙し合いの法則 生き抜くための自己防衛術』(講談社)。
土肥: 日本の人口減少が問題になっています。内閣府によると、日本は長期の人口減少過程に入っていて、2026年には1億2000万人を下回り、2048年には1億人を割って9913万人になるとのこと。
このまま急激に人口が減ったら経済に与える影響は深刻なものになるので、政府は少子化対策などに取り組んでいますが、いまのところ解決策は見つかっていません。
動物のことに詳しい竹内さんは、日本人が減少することについてどのように思われますか? 動物園で見かけるような動物でも減少している種がたくさんいます。また、これまでたくさんの動物が絶滅しました。
竹内: 多くの人は「動物の種が滅ぶことはよくない」といった感じで深刻に受け止めていますよね。でもこれまでの歴史を振り返ると、たくさんの種が滅んできました。滅ぶことは珍しくないんですよね。北京原人もネアンデルタール人も滅んだ人類です。環境の影響で、自然に滅ぶ種もいますが、われわれ人間の直接の祖先はたくさんの動物を滅ぼしてきました。
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