松坂大輔がどんなに落ちぶれても「メジャー」にこだわる3つの理由臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/3 ページ)

» 2013年09月05日 06時30分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

メジャーリーガーはマスコミに追いかけ回されない

野球場 (写真はイメージです)

 なぜ、ここまで「メジャー」にこだわってイバラの道を突き進もうとするのか。松坂は2011年6月にトミー・ジョン手術で右ひじにメスを入れたことを踏まえ、こう説明している。

 「今までのボクの野球人生が順調すぎたのかもしれませんね。確かに手術を受けてから先は苦難の連続になるかもしれない。でも、それも覚悟の上ですよ。ボクは今、野球を『エンジョイ』できている。メジャーリーグという舞台は、そういう環境なのです。たとえ、どんなに泥水を飲むことになってもメジャーの舞台を目指して戦い続けたいですよね」

 単なる開き直りのように聞こえるかもしれないが、決してそうではないようだ。世界最高峰のプロ野球リーグで強打者たちと対峙したい。そしてゾクゾクするような緊迫感のある戦いをしたい。そういう強い思いがあるからこそ松坂はメジャーリーグのマウンドを追い求め、自分の欲望を満たそうと必死にもがくことで「エンジョイ」できているという。

 しかし松坂がメジャーリーグにこだわる訳は、それだけではない。実はグラウンド外の意外なところにも、2つの理由が隠されている。

プライベートで息を抜くヒマもない日本球界

 松坂によれば、日本でプレーを続けていた西武ライオンズ在籍時代にはプライバシーの侵害による閉塞感を覚えることがあったという。日本では試合だけでなくプライベートの場でも報道陣に追い掛け回されることが多々ある。家族を誰よりも大切にする松坂にとって、これはかなりの息苦しさにつながってしまっていたようだ。

 一方のメジャーリーグでは選手と報道陣との間に一定の距離が保たれている。取材場所は原則として球場のクラブハウス(ロッカールーム)のみ。それも試合前と試合後に決められた時間内だけだ。球団側の許可なくエリア以外の場所で取材を行ったメディアは、取材パスをはく奪される可能性もある。

 選手や監督の自宅にアポなしで押し掛けたりするような、いわゆる日本流の夜討ち朝駆けはタブー中のタブー。だからメジャーリーグでプレーしている間は日本のようにパパラッチの陰におびえる必要もなく、取材対応は基本的に試合のときだけでいい。松坂自身も「この環境は、本当に何物にも代え難い」と、はっきり言い切っている。

 現在日本でプレーする元メジャーリーガーも、こう言う。

 「些細なことかもしれないけれど、実は選手ってグラウンド以外のところでストレスを感じることが多いんですよ。日本の場合はテレビ、ラジオや新聞だけじゃなくて、写真週刊誌も僕らのスキを狙っている。家族の写真も平気でパシャパシャ撮られるし、プライベートでも息を抜くヒマもないというのが正直なところ。あるスター選手の奥さんが『これじゃあ、気楽に買い物もできない』と愚痴をこぼす毎日が続いてノイローゼになってしまったケースもある。だからメジャーリーグでプレーするほうが家族ともども余計な神経を使わなくていい。家族思いの松坂が『メジャーのほうがエンジョイできる』と思う気持ちは何となく分かりますね」

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