なぜ部下にイライラしてしまうのか? 上司が歩む3つのステップ気鋭の経営者に聞く、組織マネジメントの流儀(2)(3/4 ページ)

» 2013年04月19日 12時00分 公開
[Business Media 誠]

なぜ自分は部下に怒っているのか

中土井:お話をうかがっていると、辻井さんには、自分の中に判断の基準となる「起点」があるんだろうなあと感じます。その場の感情というのではなくて、いつも立ち戻る点です。

辻井:はい、判断の起点をつくるのはすごく大切です。部下の行動に対して怒りを感じることはみんなあると思うんです。「遅い!」とか「なんでやらないんだ!」とか。でも、それが自分のエゴから来ているのか、ゴールに到達できないことから来ているのか、考える必要がありますね。

中土井:どういうことでしょうか?

辻井:例えば1時間のミーティングに10分遅刻したメンバーがいたら、全体の6分の1がなくなってしまったので、会議の中で、何かを決めるという目標達成が難しくなります。達成できないのが嫌なので、それを伝えればいいのです。言わずにイライラしながらミーティングを進めて生産性が下がるくらいなら、言ったほうがいいと思います。

 一方、例えば終日続くセッションなど、8時間のミーティングに5分遅れてきた場合、96分の1がなくなっただけですので実害はあまりないですよね。会議の目標達成はできるだろうと考える。それなのに怒りを感じるのは、大事なミーティングなのにそれを分かってくれていなくて寂しいからなんです。

 このように、事実と自分の解釈(この場合、怒り)の間にあるものは何だろう、と考えたりはしますね。

中土井:なるほど。ゴールを達成できない怒りか、自分の感情(分かってくれない、とか)なのかを区別する、ということですね。

 そういえば、『学習する組織』(英治出版)のピーター・センゲさんが講演の中で面白い表現をされていました。「売り上げや利益は、生命が呼吸するのと同じで、企業が存続するために非常に重要です。

 でも、売り上げや利益を目的にするのは、酸素を吸うために生きているようなもので、おかしいですよね」と。それを聞いて本当にそうだなあと思いました。

 特に新任マネージャーは、業績を上げることのプレッシャーを感じると思いますが、酸素を吸って何をしたかったんだっけ? という落とし込みが大切ですよね。

辻井:そうですね。会社のミッションがあるわけですから、業務上で「何をしたかったんだっけ」というのは比較的簡単に落とし込めるのではないでしょうか? ただ、会社の価値観と本人の価値観が重なっていないと、落とし込むのは難しいでしょうね。パタゴニアの場合は、地球環境問題に対して何かしたい、アウトドアスポーツや自然に興味があるという人でないと難しいでしょうし。

中土井:売上至上主義の会社にいて、悩んでいる新任マネージャーがいた場合、どうアドバイスされますか?

辻井:もし、自分自身と会社のあり方の間で悩んでいるのであれば、まずは、その人自身のゴールやビジョンを聞くと思います。例えば、会社のどんな部分について自分がリーダーシップを発揮したいと考えているのか、会社が持っているどんなテクノロジーに共感しているのか、それによって将来何が実現できると考えているのかなど、何かあるはずですよね。

 私は到達点のイメージが一番大切だと思うんです。新任マネージャーが最初から明確にビジョンを持っているわけではないかもしれませんから、そこをじっくりと話し合うのではないかなと思います。

部下に対する怒り……何が原因なのかを考えなければいけない

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