北総鉄道と同じ轍を踏む? 日本一安い運賃「北大阪急行電鉄」が値上げする日杉山淳一の時事日想(4/6 ページ)

» 2013年04月12日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

恩恵を受ける乗客は駅周辺の人だけ?

 調査も進み、需要予測もまちづくりもプランには織り込み済。しかし、本計画は運賃面で課題があり、これは北大阪急行線延伸検討委も要検討と認識している。もはや“万博マジック”が使えない新路線の建設は、全国で見られるニュータウン鉄道と同じ高額運賃になってしまうのだ。

 鉄道路線について、利用者にとって最も関心の高い要素は「スピード」と「運賃」だ。このうち「スピード」については申し分ない。なにしろいままで鉄道がなかった地域である。従来はバスで千里中央へ出て鉄道に乗り換える必要があった。新箕面駅付近からだと、現在はバスと鉄道を乗り継いで梅田まで36分かかるところが24分になる。広域な住宅エリアから千里中央駅へバスが集中していたわけで、これが新駅2つに分散される。特に新箕面駅はバスターミナルを整備して交通の中心とする計画である。バス交通も整理されて、道路もかなりスムーズになりそうである。

新駅付近の場合は時短効果、運賃低減効果か大きい。バス便の乗客に対するメリットは少ない(出典:箕面市)

 しかし、新鉄道路線の運賃は高くなりそうだ。鉄道路線事業は路線整備を箕面市が中心となった第三セクターが担当し、列車の運行は別の会社が担う。運行会社は今のところ直通先の北大阪急行電鉄が有力である。つまり、北大阪急行電鉄が第三セクターに対して線路使用料を支払う仕組みとなる。

 そうなると、残念ながら運賃は現在の北大阪急行電鉄の水準とはならない。計画では、新線部分のみ60円程度の「加算運賃」を設定するという。加算運賃を設定した上で乗継割引を実施し、なるべく運賃が高くならないように配慮したようだ。なるほど、想定する運賃表を見ると、現在の千里中央から梅田まで運賃350円に対して、新箕面から梅田までは450円。わずか100円で新線区間に乗れるから、従来の千里中央までのバス代、210円よりもむしろ安く済む。

運賃シミュレーションの基本となる「60円加算運賃表」(出典:箕面市)

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