土肥:会社を経営される立場になられて、どんなことが見えてきたでしょうか。
窪田:人間というのは感情的な部分と論理的な部分――両方が大切なんだなあということが分かってきました。そしてそれをどのように伝えるのかがとても重要であることも学びました。
例えば、論理的に考えて「この方法が正しいので、それでやってください」と言っても、感情的に「それはできない」というケースがあります。そうしたときに、人の感情を理解しなければいけません。そして、その人にやる気を出してもらって、同じ方向を向いてもらう。経営者になったときにはこのことがよく分からなかったのですが、いろいろな経験を積んで、今では少しずつできるようになってきました。
「この仕事をやらないと、多くの人を救うことができない」と感情的に訴えることもありますし、「これがうまくいかないと、(数字を見せて)経済的に厳しくなる」と論理的に訴えることもあります。会社を経営するうえで、感情と論理のバランスを考えてメッセージを出していかなければいけない。そうしないと人は付いてこない、ということを学びましたね。
土肥:米国映画を見ていると、会社の社長が社員にこんなことを言いますよね。「あなたはクビだ。もう明日から来なくていい」と。こういうシーンを見ると、「あー、米国の会社って、経営者が強いんだなあ」と思ってしまうのですが。
窪田:もちろん、そうした部分はあります。ただ雇用の流動性が高いので、社員が“会社を選ぶ”ことができるんですね。少なくとも日本よりは。また優秀な人であればあるほど、会社を辞めていくので、経営側は彼らを止めなくてはいけません。なので先ほども申し上げたとおり、社員の感情的な部分と論理的な部分――両方のニーズを満たしていかなければいけません。
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