アニメビジネスの明日はどっち? 2012年アニメ産業速報アニメビジネスの今・最終回(4/4 ページ)

» 2013年03月26日 08時00分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]
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日本のアニメの今後を予感させる海外展開

 海外展開についても現状では2011年までのデータしかない。2012年のデータは9月発刊予定のアニメ産業レポート2013年版を待ってほしいが、いくつか見るべき点があるので述べておきたい。

 まずは「中国パッシング」。筆者自身も中国についてはここ数年ウォッチしており、年2〜3回は訪れていたが、一昨年来の日中関係における中国サイドの一方的な主張に対し、どうも日本人のアニメ業界人にあきらめ感が漂ってきているようだ。自国の権益を守ること(事実上の日本製アニメ輸入禁止/海賊版・海賊サイトの放置など)はアニメ発展途上国の政府としては当然のことかもしれないが、「あまりにも公正感に欠けるのでは」と思ってしまうのはアニメ業界に限ったことではないだろう。

 以上のような事情で、長らく中国に向いていた目が今、シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイといった東南アジア、そしてインドに向きつつある。実際、2012年に日本国内の企業がタイへ投資した金額は中国の倍であったそうだ。日本のアニメ業界としては中国と付き合いたいのは山々だが、今の政治環境では到底無理だろう。日本でマンガやアニメ、ゲームの制作やビジネスを学んでいる多くの中国人留学生に期待を掛けるしかないのだろうか。

 今まで海外展開を意識した作品はいくつかあったが、いずれも日本での展開を中心に置くものだった。ところが、昨年から必ずしも日本での放映を先行させない形で展開される作品が出てきた。いずれも日本テイストのアニメだが、対象は明らかに海外である。

 その1つが、現在テレビ東京で放映中の『獣旋バトル モンスーノ』である。この作品は、電通エンタテインメントUSAと米国の玩具会社ジャックス・パシフィックが手を組んで進めるグローバル・プロジェクト。すでにニコロデオン姉妹チャンネル、ニックトゥーンズで先行放映されているが、海外で結果が出れば、今後のアニメビジネスの方向を指し示すものとなるだろう。

 そして日本・ドバイ・韓国共同製作の『Scan2Go』。日本のディーライツ、ドバイの大手玩具ニューボーイ、韓国大手メディアSBSプロダクション、ストーンブリッジキャピタル、3カ国4社が参加するプロジェクトだ。米国で先行放映中であるが日本でのオンエア予定は今のところないものの、こちらも結果次第だろうが注目に値する作品だろう。

 最後がインド版『巨人の星』である『スーラジ ライジングスター』。昨年12月からインドで放映開始となったが、こちらの動向も大いに気になるところだ。なぜならば、ある意味「オールジャパン」プロジェクトだからである。

 原作を司る講談社が言い出しっぺとなり、博報堂が営業、トムスが制作面で参加、それを経産省がサポートするというフォーメーション。さらに、番組スポンサーとしてスズキ、コクヨ、日清食品、全日本空輸、ダイキン工業がサポートするという、まさしく「オールジャパン」体制で臨んだ作品だ。

 今までのようにアニメ単独ではなく、日本のサービスや商品も一緒に進出するこのプロジェクトは今後の海外進出におけるビジネスモデルの示唆となるはずである。詳しくは、講談社の古賀義章氏が書いた『飛雄馬、インドの星になれ!―インド版アニメ『巨人の星』誕生秘話』を読めば理解できるだろう。

 昨年4月から始まったこの連載「アニメビジネスの今」だが、今回をもって終了となる。1年間のお付き合いに改めて感謝する次第である。さまざまなアドバイスをいただいた担当編集者の堀内彰宏氏には謝辞を述べたい。今後も日本のアニメの「明日はどっちだ」について書き続けようと思っているので、またどこかでお会いできるだろう。

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