下画像のような意思表示付きのネット資産リストを残しておく。これが対応策の要だ。印刷してエンディングノートや預金通帳などと一緒に保管しておけば死後に見逃されない。あとはスキルのある遺族が最大限希望に沿って処理してくれるだろう。最終的に人任せになってしまうが、現時点ではこの方法がもっとも確実だ。米国には「LifeEnsured」や「Legacy Locker」のような死後発動する権利管理サービスもあるが(※連載第2回「死んだら発動する“お別れサービス”は何年先まで保証する?」参照)、日本国内で利用するにはまだハードルが高い。
このリストがあれば、遺族側の負担もずいぶんと軽くなる。各サービスのIDとパスワードがあるので、遺族は見た目上本人として振る舞って、課金サービスを停止したり、仕事がらみのメールをバックアップしたり、ネット上の友人や読者にお別れのメッセージをアップしたりと、あらゆる処理が認証なしにできるのだ。いちいち遺族であることや本人が死亡したことを証明する手続きがいらない。
多くのネットサービスは会員のIDやパスワードを他人が使うことを禁じているが、2013年時点では、遺族や相続人が遺品整理の一環でアクセスする場合に限り、ほとんどが大目にみてくれる。本人の代理としてログインして処理する行為は珍しくないのだ。最近は、遺族向けの正規の対応窓口を設けるサービスも増えているが、本人確認の手間が膨大にかかったり、本社部署と英語でのやりとりが求められるなど、まだ普及する段階にない。このあたりの事情は、今後数年間で大きく変わっていくと思われる。
注意したいのは、自分が使っていたサービスを引き続き使ってもらう「継続的な引き継ぎ」のパターンだ。本人確認があいまいな無料サービスなら問題ないが、振込口座が凍結すると身動きがとれなくなる課金制サービスは、真正面から別人として正規の引き継ぎ(=承継)をする必要がある。ただし、連載第6回「有料サービスは死亡した会員をどうやって知り、どう処理する?」で触れた通り、通信の秘密や一身専属性を重視するサービスの場合は承継が認められない。このあたりはサービスごとのスタンスの違いを調べておくしかない。
もう1つ。死後も遺族などに知られたくない資産がある場合は、上記のリストに記載しなければいい。パソコンに「僕が死んだら・・・」や「誉」(連載第4回「死後にHDDデータを消去するソフト、愛用者は5〜10万人!?」参照)などを入れておけば、自分とのそのアカウントとのつながりを永遠に絶つこともできる。
その場合も、ブログやホームページなどといった公開タイプのコンテンツだけは、最低限のマナーとして荒地化防止策を施しておきたい。最良は、コメント欄や掲示板の書き込み時に画像認証を求める設定にすることだ。自分の死後も読者がコメントを付けられるし、機械的に書き込まれるスパムはブロックできる。
今後ネットを取り巻く環境が大きく変わっていくことを念頭に、上記の準備をしておけば、大切な人たちに思わぬ迷惑をかけずに済むだろう。次回は逆の立場……遺族が故人のネット資産を見つけて処理する流れをみていきたい。
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